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われわれの分析で二番目の「重要な特徴」は行政府の性質―ガバナンスの慣習もしくはスタイル―である。欧州委員会の事例では、これは多数決主義というよりははるかに合意主義的だが、政党はきわめて従順な役割しか果たさない。欧州委員会それ自体(すなわち、理事の団体)は明示的に平等に権限を共有する組織であり、そこでは共通の同意(もしくは不本意ながらの同意)を得ることが改革の目的にとってきわめて重要とされる。欧州委員会は、政治行政の経験者(典型的には元閣僚)によって構成されるが、彼らは、閣僚会議の形で、ライバルの政治家と渡り合わなければならない。欧州委員会は、欧州議会に対して説明責任を負っている。欧州議会は通例、とくに強力な政治力は持たないが、1999年の欧州議会からの圧力は理事に前例のない辞職を余儀なくした。

 

表3.1の「閣僚・高級官僚の関係」に移ろう。理事は―いろいろな意味において―ユニークな存在である。まず、そこには大半の国民国家という観点から見て、政治的階層として「余分な」層と見なされるものがある。「高級官僚」はDGであり、欧州委員会の仕事の永続的な頭である。その上に漂っているのが、政治的階層のうちの最初の層―理事である。理事は指名されるが、一般的にはその経歴は政治家(前段を参照のこと)―である。しかしながら、この理事を越えると、さらに有力政治家の強力な組織―加盟国の閣僚会議(the council of Ministers)―がある。各理事は、依然としてことをもっと複雑にするだけだが、個人的に任命した公務員からなる、かなり大きな‘諮問機関(cabinet)’を持っていて、そうした公務員が政策にかかわる助言を与えたり、DGとの意見の衝突の種をまいたりする(衝突はそれほどまれではない)。最後に、‘諮門機関(cabinet)’の位置が暫定的である(各理事の在職期間を越えることはない)のに対し、キャリアのDG、それにDGのすぐ下位の階級は、政治的に任命に影響を与える(Page, 1997)。こうしたことすべての結果、上級公務員と「その」理事との関係のきわめて複雑な組み合わせができあがる。彼らのキャリアは、フランスの状態を検討した後では、平素から錯行しているとは言えないが、高級官僚のランクは確かに政治化されているし、「諮問機関(cabinet)」という形を取って、一時的にさらに政治化された官吏の大集団もある。

 

欧州委員会の行政文化については、おそらく準備段階でのフランスの優越性の形跡を色濃くとどめているというのがフェアだろう。たとえば強力な分離独立したヒエラルヒーの存在(DG制)や財政管理システム、そして圧倒的に統制的かつ法律尊重主義的な精神的傾向など、フランスの慣行も肩書きもその多くが継続している。公益主義より‘法治国家’であるが、それはまた内容によってかなりばらつきがあるし、また改革と新加盟国からの、より広い職員補充がこうした精神風土を次第に変えていくだろう。

 

理事に届けられる、政策に関わる助言については、相当に多岐にわたる。DGからの助言に加えて、理事はみずからの「諮問機関(cabinet)」から見解を得るし、加盟国である自国行政部門内に情報源を持っていることも異例ではない。かれらはまた、ブリュッセルに設立された、さまざまな圧力団体からの証拠と要求にさらされる。これは過度に複雑なシステムだが、閉鎖的なシステムではない。

 

 

 

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