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3.8 欧州委員会―特殊な事例

 

欧州委員会は、独立した一つの主権国家ではないため、明らかに特殊な事例である。また、その仕事の多くは、超国家的権威として、国民国家とともに処理されており、それゆえ、中央政府と地方政府との関係と同様に比較することは不可能である。しかしながら、‘比類なき’側面がいくつもあるにせよ、われわれが上記において本書の選んだ11ヶ国に適用した分析の多くは、欧州委員会にも適用できる。実際、われわれの主張では、われわれの包括的分析の三番目、四番目、五番目の特徴は欧州委員会に難なく関係づけることが可能であるし、また主たる差違は一番目とニ番目の特徴―国家構造と行政府のスタイル―から生じている。まず、この二つの問題の多い特徴に取り組む。

 

権限の垂直方向の分散という観点からすると、欧州委員会は連邦制とも中央集権制とも分類できない。確かに欧州委員会は、権限の階層を持ち、単一の憲章で規定される方法で権力を共有しているという意味では、連邦制ではない。それでも、何らかの類似はある。欧州委員会は、条約(ローマ条約、マースとリヒト条約)の枠組みの中で機能するし、それらの条約が欧州委員会とその他のEU機関、それに加盟国との間にあると思われる関係を規定している。この意味において、欧州委員会は疑似連邦制であり、条約によって規定された環境の範囲内で機能するが、そこにおいてはその他の「レベル」は通常の意味における「下位」ではない。たとえば、明らかな違いの一つとして、もっとも連邦的な国家は諸外国や国防に関わる方針について責任を保持するが、EU加盟国は、この意味におけるみずからの独立性を積極的に抑制し、制限を受けており、優柔不断で、もたもたしているが、これらの地域内で共通したアプローチの開発に向かおうとしている。

 

一方「統一化」の定義もまたぴったり適合するようには見えない。というのは、欧州委員会はそれ自体統一化された組織であり、その働きの多くは、それぞれ権利を持つ独立した主権を有する加盟国が協同の合意に達するかどうかにかかっているからだ。したがって、この意味で、もっとも極端に欧州をおそれる人々は、欧州委員会を、フランスやイギリスのモデルの上に立つ強力な中央集権国家になぞらえる。

 

権限の水平的な分散についての問題に移ると、即座に見て取れるのが、欧州委員会は強力な垂直方向の分割があり、調整が難しいことがしばしばあるということだ(Middlemass, 1995; page, 1997)。各事務局長(DG)は相当の程度、法律そのものといえるし、水平的な調整を行う「計画執行」の事務局長たちは(IX―職員、XIX―予算、それにXX―監査と官吏)影響力を、EUのプログラムを実行する各事務局長に対して影響を及ぼすために懸命に苦闘しなくてはならない。一言で言うなら、欧州委員会はきわめて細分化された組織なのである。

 

これらの構造的特徴を与えられると、マネジメントの改革について、どのようなことが導かれるのだろう。おそらく、広い範囲にわたる、徹底的な改革で、ニュージーランドやイギリスのように統一化した、中央主権国家で行われるたぐいの改革はむずかしい。歴史的記録からは、―部分的で、漸次的改革(そして失敗した改革)のゆがんだ歴史はあるにせよ(Spierenberg, 1979)―、以下のことが引き出されるように見える。すなわち、業績もしくは産出/成果に基礎を置くスタイルのマネジメントヘの包括的な再編成もなければ、それへと向かうこともない。対照的に、欧州委員会は、その大部分が旧態依然の官僚制にとどまるだろう。

 

 

 

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