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最後に、行政文化を「公益」か「法治国家」かという二極に分類することが本当に適切なのかという疑問を抱くひとがいるかもしれない。本書で検討中の数ヶ国は、極度に法律を尊重する国家形態から外れているが、その外れ方は公益モデルそのものとは方向を異にしている。オランダ、フィンランド、スウェーデンはすべて、第3のカテゴリーに分類される。オランダは、第二次大戦後の「脱司法管轄(juriodification)」時代をくぐり抜けて、今ではその行政文化は複雑な混合物の観を呈しており、どちらかといえば隠し立てしない姿勢を持っているため、政策決定プロセスに参加する専門家や集団は多種多様になっている。旧態依然の「大黒柱設置主義」的な考え方の残滓もまたあり、その限りにおいて行政部門の意思決定プロセスが主要な社会集団の代表の均衡を確実に保つようにすることは依然、重要とみなされる可能性がある。したがって、それは本質的に合意によるアプローチであり、完全な‘法治国家’哲学のもつ閉鎖的な司法の純粋さとはいちじるしく異なるアプローチである。フィンランドとスウェーデンは、法律的訓練は過去においては高位の公務員にとっては普通のことであったが、オランダの場合と同様に、この法曹家の優越性は過去50年のあいだにかなり希釈された。両国においては、今の公務員はさまざまな訓練経験をもっているし、また上級公務員の文化は、法律の厳密な適用と同じ程度に、穏健な強調組合主義者の仲介業務の要求を満足させなければならないと言われている。また、両国では、国家の重要性、中心性、及び継続性という意味もある―上級公務員は、ワシントンDCや、時にイギリスの首相官邸で見かける人々ほど、不安に駆られ、脅かされた人種ではない。

 

3.7 政策助言の情報源

 

われわれが重要なものだと示唆したいと願っている行政制度の最後の側面は、大臣に対する改革関連の助言の重要な情報源の多様性ということである(ここでは、マネジメント改革関連の諸問題に関する助言のみに限る。国防政策、経済政策など、その他の政策刷新についての助言は、他のネットワークが情報源となるかもしれない)。原則として、有力政治家は、幅広い情報源―みずからが属している政党、手持ちの高級官僚、あるいはマネジメント・コンサルタント、専門分野の学者、営利企業、政治政策関連のシンクタンク―からマネジメントについての助言を得ることができる。ここでの基本的提案は、助言のための通例の情報源の範囲が広くなれば広くなるほど、新しい理念―とくに公共部門の外からの情報―が、説得力を持ち影響力を備えた形で、閣僚の耳に届く見込みが高くなる。それゆえ、たとえば、新しいマネジメント理念(図2.1の囲みF)を、有力政治家が共感をもって傾聴する機会はより早く、より多く到来するだろう。

 

 

 

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