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なぜ、イギリスは西ヨーロッパのどこよりも、変化のスピードが速かったのだろうか。もっとも重要なファクターが3つある。ます、マーガレット・サッチャーが公務員の改革を推進した。‘政治的意思’という語はふつう、この政府の決定を説明するために用いられる。‘強く’支配的で、それより何より粘り強い、行政上のリーダーシップの方が長いが、より正確だ。

 

第二に、そのリーダーシップには憲法上の制限が多少あり、政府が議会の週半数を占める時はとくにそうである…。イギリスの中央政府行政部門の改革は、制定法を必要とせず、国王大権、もしくは行政権を行使するだけでよい。

 

最後に、政府は、そのさまざまな一式の改革を正統化し、売却するために、明確なイデオロギー的戦略を案出した。政府は大きな政府と使い古しの荒廃した市場を攻撃することにより、個人の選択権をより多く創出し、消費者のために運動しようとした。

 

3.5 高級官僚と大臣の関係

 

どこの国でも、大規模なパブリック・マネジメントの改革はふつう、(前章で詳述されたとおり)有力政治家と上級公務員の双方が関与する。しかしながら、これら二つのエリート集団は国によって相当に異なる。そうした多種多様な中に、われわれは主たる特徴を二つ確認した。まず、政界での経歴は「高級官僚」の経歴から分離独立しているのだろうか、それとも統合されているのだろうか、という問題がある(Pierre, 1995)。第二に、高級公務員の地位は、その地位を占めている者たちが特定政党の共感者である(そのうえ、そのために選任されたともいえる)という意味で、その地位自体、どの程度政治的なのだろうか。その意味において、高級官僚は、たとえその経歴が政治家としての経歴から分離独立しているにせよ、依然、政治的な存在である可能性がある。

 

マネジメント改革の効果は、たいへん微妙であるかもしれない。効果は、とくに行政制度の様々なレベルにおける改革の「所有権」に関係する。それゆえ、閣僚と高級官僚の経歴が統合されている場合、最高レベルにおける改革の所有権は、フランスの、多くの大臣が高級官僚と密接に絡み合う経歴を共有する「高級官僚(grands corps de l'Etat)」のような制度では、式の改革の具体化は、たとえばカナダやイギリスにおけるほど一般的ではないにせよ、大臣と高級官僚が共有している改革観と職業上の交際一般に依拠する可能性がある。しかしながら、フランス式の経歴が統合されるシステムでも、所有権の問題がヒエラルヒーの下方の階階層にいたって、ふたたび出現するかもしれず、その場合、その階層に属する下級公務員は「高級官僚」のうちの政治的野心家とはなんの類似性もなければ、なんの同一性もない。図2.1について、フランスの問題は、「一式」(囲みM)を具体化する当初の段階ではなく、―見たところ、ここのように見えるが―、それよりはむしろ執行過程(囲みN)にある。

 

第二の特徴―最高位の官職の政治化―は、だいたい同じ方面において、その影響力を増す。そのため、高級官僚と下級公務員との間のギャップは広がり、後者の見解をとるなら前者の改革の「所有者」としての正統性は減じる。しかしながら、極端な場合―高級官僚の最高位の官職の就任者の顔ぶれが、新しい有力政治家の選挙の後にがらりと変わった場合―には、この結果改革のプロセスに不安定さが生じるかもしれない。

 

 

 

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