

最後に、アメリカ合衆国は、これはまた別の混交する特徴を備えた行政府であり、研究者の心を奪う一例である。一方、行政府の性質(リジファートのファクター1)について言うなら、合衆国は強力な多数決主義である。合衆国は少数の政党しか持たず、行政府は一党のみ(共和党か、民主党)によって構成される。これのため、勢いがあって広範囲を対象とするマネジメント改革の可能性がある―少なくとも大統領が議会の多数派政党と政党を同じくしている期間(その他の時期には、フランスの‘共棲’のアメリカ版になるが、立法府はフランスにくらべてはるかに強力である)―。しかしながら、国家構造(ファクター2)は、まったく異なる方向にある。合衆国は分権化した連邦国家であり、やや硬直的な構造を持つ。もう一つ別の要素を考慮に入れる必要がある。合衆国の立法府(上院と下院)は通常、行政府との間に強い関係があるうえに、立法府においては、言うなればイギリスの内閣が有する支配権と同様の力を、同じ政党の党員にふるう。これらのファクターはさらに、多数決主義の力の働きを弱め、行政府の改革能力の評価がより慎重に行われる方向へと、仮説を変化させる。改革の実績を検討しようとする時に、実績はそれ自体、混交体である。その都度大統領は声を大にして、連邦政府の部局や機関のマネジメントを根本から改革するのだと主張するが、現実の成績はそれにはるかにおよばない(Ingraham, 1997; Pollitt, 1993)。この「有言不実行」の情況は、先に述べた、ファクター1ファクター2との間の緊張関係とぴたりと一致する。
むろん、体制の種類が、変化の変数として重要な決定因子のように見えるにせよ、それは通常、その他のファクターと連結して作用する。それは、「働く」ことを許しはするが、それ自体は「働か」ない。それ自体で働くためには、同じように原動力を持つ機関の干渉が必要である。ローズ(1997年、44ページ)はイギリスの経験を再検討して、これを明瞭に述べた。