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われわれがこれらの仮説として取り上げられた関係を証拠に照らして検証すると、少なくとも多少の一致が見られた。われわれの組み合わせ(ファクター1とファクター2の双方につき高い値の)のうち、もっとも「純粋な」多数決主義国家2ヶ国はニュージーランドとイギリスである。両国は、一般に、もっとも急進的で遠大なマネジメント改革の遂行を完了したと認められている国でもある。一方、フランスはそれらの中間―多党システムを有するが、大統領という形の、きわめて強力な行政マンを持っている―に位置し、大統領が政府の過半数を占める政党出身者の時、フランスは多数決主義の「色彩」を帯びる。たとえば1982-84年、それに1988-92年に、大規模なマネジメント改革が実行された(フランスについての記載事項は、付表Aを参照のこと)。しかしながら、その期間をのぞけば、大統領は同一政党出身ではない首相と協力して働かなくてはならなかった(共棲)し、こうした合間の期間の政策決定はより用心深く行われる見込みが高い。全体に、フランスは中間の体制を持つといえるかもしれないし、マネジメント改革の範囲と効果という観点から見て「中間に位置する」国家だと言えるかもしれない。それゆえ、仮説との結びつきは、依然、有効である。

 

第三の事例はフィンランドで、これまた中間派の事例だが、フィンランドはフランスよりも完全な合意主義の極に寄っている。この国では大型連立内閣はふつうのことだし、政治文化は合意のうえでの警戒と相互の和解といった形である。政党間の紛争が必ず起きるが、フランスやイギリスでは日常茶飯事の、白熱した様相を呈することは滅多にない。フィンランドの事例で気づくのは、内容があって空理空論ではない改革が、10年以上にもわたり、きわめて変化に富んだ政党の混成である、三つの連立政権の在任期間中に、継続的に実行されたという歴史である(Appendix A and Pollitt et al., 1997)付表Aおよび『ポリット他(1997年)』)。

 

表3.4右下の「合意による/合意による」の囲みが空なのは、本書の選んだ10ヶ国のうち、リジファートによれば、このカテゴリーに分類された国が皆無だからである。だが、他に少なくとも1ヶ国は彼がこのカテゴリーに入ると分類した国がある。これは興味深いことに、スイスである。それに、スイスは、政府が大規模な政策改革を遂行するうえで大きな困難があることで悪名高い国でもある(Immergut, 1992)。

 

この章を終わるに当たり、さらに2例、ドイツ合衆国の事例を検討することは、それだけの価値があるだろう。ドイツの場合、国家の‘構造’は連邦制で、しかもきわめて分権化されている(「補完性の原則」)、一方、行政府の形は通常、最小限度の勝利による連立内閣(1982年以前は社会民主党=自由党、1982年から1998年は保守党=自由党)である。前者の構造的な特徴の影響は根が深い。

 

 

 

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