日本財団 図書館


この手の分析は、完全に一組の定義と概算にもとづくが、パブリック・マネジメントの改革との関係における値は直接提示される。行政機構の抜本的な構造の改革は、合意にもとづく体制より、多数決主義の体制における方が難しくない。これは一般に、そうした変化がふつう「勝者」と「敗者」とを生み出すからで、体制が全員の合意によればよるほど、失敗しそうな関心事は行政府内で直接申し立てが行われ、予見される変化を阻止、遅延もしくは弱体化しようとする。それゆえ、合意主義の体制は、はなはだしい多数決主義の行政府に比べて、劇的かつ過激な改革に向かう傾向が少なく、政治的な実現可能性という点から見れば、その能力に乏しい。多数決主義の行政府は、その他の、多岐にわたる利害関係からの反対があったにせよ、それでもみずからの構想を押し進めることができる。こう言うと多数決主義体制の「宣伝」じみて聞こえるが、それはまた、これらの同じ特性によって、多数決主義体制の方が国家を混乱させる政策逆転が起こりがちな傾向があることを意味するとも言える。たとえば、イギリスでは1945年から1989年まで、労働党政権と保守党政権が交互に繰り返されたために鉄工業の国有化、民営化、再国有化が行われ、サッチャー首相の下で、再度民営化が行われた。

 

表3.4 民主体制のタイプ:国家構造と行政府の性質

050-1.gif

出典(Lijphart, 1984, p.219)

 

それゆえ、政権の形態は改革のプロセスにおける、いくつかの段階で、変化に影響を与える可能性がある。第一に、それは、改革プログラムに着手するために生み出される力の程度に影響を及ぼす。第二に、ひとたび改革が達成されると、その改革の安定性に影響を与える可能性がある(一党に立脚した刷新は、相手方政党が権力を奪還すると覆されるかもしれないので、合意主義の刷新の方が寿命が長い)。第三に、改革の方法の「所有権」の意味が影響を被るかもしれないということにある。改革は多数により支持され合意された政治的意見から発生したとみる限り、改革の所有権は改革を実行する官吏の間で正統性を持つかもしれない。しかしながら、ある特定の改革が政党もしくは団体の空理空論的な手段だと認められた場合、官吏は憤慨し、その改革を敵対する不当な要求とし、可能な限り遅らせたり弱体化したりできるものとし、「所有権」を引き受けるのに抵抗するかもしれない。図2.1については、それゆえ行政府の性質(E)が好ましさと実現可能性(I、J)の展望のみならず、一式の改革の内容(M)や実現の過程(N)、そして最終的に達成される改革の範囲(O)にも影響を与えるかもしれない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION