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3.4 行政府の性質

 

中央政府の範囲がどうあれ、その範囲内でなにが起きているかは、特定の行政府の労働慣行と慣習によって定められる。比較研究法を採る学者は、これらのしきたりや、以下にあげるとおりの基本的特徴をもつ有益な類型論を作り上げた。

 

一党、最小限度の勝利もしくはぎりぎりの多数派:一つの政党が議席の50%以上を獲得した場合

最小限度の勝利による連立政権:2つ以上の政党が議席の50%以上を獲得した場合

少数内閣:行政府を構成する政党(単数もしくは複数)が議席の50%未満しか獲得してない場合

大多数内閣、もしくは大連立内閣:最小限度の勝利による連立政権のために必要とされる数を上回る政党が行政府に含まれる場合(Lijphart, 1984)

 

これらの類型が重要なのは、それぞれが異なる組み合わせの統治慣習を創り出す傾向にあるからだ。むろん、選挙の後、所与の国の行政府がある類型から他の類型に変化する可能性もあるが、かかる入れ替えは実際は比較的まれである。大半の国々では、選挙制度は相当に安定した結果を生むし、それゆえ行政府はよく定着した習慣をつくり上げる傾向がある。きわめて一般的に言うなら、上記のリストを上から下に移動するにつれて、これらの習慣はより多く協議を行い、より強く合意を志向する/野党がより少数化する傾向がある(すなわち、一党による多数派は、統治を行う上で公正な対立的なスタイルに賛成する傾向がかなりあるが、少数派内閣と連立政権の方は合意に達する方向に働く傾向がある)。パブリック・マネジメントの改革にとってこのことが暗示しているのは、決定的な変化―きわめて広い範囲にわたって利害関係を侵害する変化となる可能性が高い―の実現可能性が低くなればなるほど、行政府は最初のカテゴリー― 一党、最小限度の勝利もしくはぎりぎりの多数派―から遠ざかるだろうということである。これは必ずしもたいへん強力で正確な相互関係ではない―われわれは、行政府のタイプから、改革のパターンをただ「読みとる」ことを望んでいるわけではない―が、政治的に実現可能なものの境界線を形成する、背景的影響ではある(図2.1の観点から見るなら、これは政治システム―囲みE―で、これがなにが実現可能かについてのエリート集団の展望―囲みI―に影響を与えるのである)。

 

本書の選んだ十ヶ国の「実績」は、一見したところ、この線での推理を広く支持しているように見える。明らかに多数決主義の政府(1996年までのオストラリア、カナダ、ニュージーランド、それにイギリス)について吟味し、これを明らかに大多数の合意にもとづく体制(フィンランドおよびオランダ)と比較した場合、マネジメントの改革の範囲と効力は後者におけるより前者において大きかったのは疑い得ない。しかしながら、両者の中間派もまた存在しているし、ここでは、この「経験則」を適用しても、それほどよく働かない。

 

われわれの挙げた特徴のうち最初のもの―国家構造―と、この第二の特徴―行政府の性質―との間には興味深い関係がある。複雑な統計分析において、リジファートは、二つの側面にそって、21ヶ国を分類した。最初の特徴(ファクター1)は行政府のタイプと政党数によって大方が決定され、第二特徴(ファクター2)は連邦制の存在と分権化の度合いによって決定される。このアプローチによって、表3.4.に描かれているパターンが抽出される。

 

 

 

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