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電算化技術の導入によりこのシステムを改革するという決定が下されるとする。理論的には、新しい手続きの方が速いが、職員のインセンティブは低くなる。効率化の利益が大きいだろうことは目に見えている。実際、この簡単そうに聞こえる改革でさえ、相当な複雑さがともなう。数千人とは言わずとも、数百人の職員が新しいコンピュータ技術を使用するために訓練が必要となる。窓口の職員に必要な訓練関連資格を増やす必要があるかもしれない。公共サービスの労働組合は、いかなるものであれ、こうした変化を心配しそうだし、それよりももっとありそうなのは、職員削減という形を取る、効率化による利益獲得の試みに対する抵抗である。必要なコンピュータのソフトウェア購入は、それほど単純ではないかもしれない(Bellamy and Taylor, 1998, pp.41-51; Hudson, 1998, Margetts,1998)。新システム内に保存されているデータや、その他電算化された政府データとの接続、ファイル上に保存された個人情報のセキュリティについての問題もまた、生起するだろうし、そうしたことは法律的な問題を内包していそうである。これに類することは、他にもたくさんある。変化を上手に管理しようとすれば、かなりの深謀遠慮、計画と時間が必要となるだろう。改革を宣言することは簡単だが、それを実行するには忍耐と決意が必要なのだ。

 

こうした、急進的、もしくは急速な変化にとって恐るべき障害となりそうなことがあるにもかかわらず、改革のプログラムは着手‘され’、強い影響を与えることもしばしばある。図2.1において、囲みM、N、Oは、こうした行政制度のよりダイナミックな側面を示している。これらの活動は、―ひとまとまりの改革を発表し、変更を実現し、結果を得る―、本書後段の主たる主題なので、ここでの取り扱いはそれに相応して短いものとする。

 

一式の改革‘内容’(M)は、上述の、好ましいものと実現可能なものとの間の相互作用の産物である。こうした一式の改革は、発表される時には相当にレトリカルな側面を見せることがしばしばで、これがその時々の流儀と理念をべースにハーモニーを奏でる。そうした一式の改革は、検討中の、ある特定の組織変更を主張する話法を確立もしくは強化する。ここではアメリカ合衆国の例をあげる。

 

1993年に、これから10年以内に連邦政府が小型化し、顧客主導型となり、労働者に友好的になり、アメリカの最優良企業のように経営されるようになるという人間がいたら、その人間が得るのは…嘲笑だっただろう。だが、それこそ、クリントン大統領が4年前、わたしに連邦政府の徹底改造を―車輪を元の位置につけなおせと―命じた時に発表した難題だった。われわれはすぐに、連邦政府に革命を起こす必要があるということで合意に達した。われわれはそれを政府の革命とよんだ(Vice president Gore, 1997, p.1)

 

もっと一般的に言えば、以下のようになる。

 

話法とは、言語に埋め込まれた世界を理解するための枠組みで、これによってその信者はさまざまな知覚された情報を首尾一貫した統一体へとまとめ上げることができるようになる。したがって、これらの信者は、概して当然視できる仮定条件や理解力を共有しているのだ…。密接に結びついた、支えとなる話法(単数もしくは複数)なくして機能し得る制度はない(Dryzek, 1996, pp.103-4)。

 

 

 

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