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あるいは、環境や地方、家族、スポーツ、その他たまたま人目を引くもの、流行しているものなどのために特別な省庁や出先機関を創設する、など、より具体的な提案を採択するかもしれない。政党の政治理念は、多かれ少なかれイデオロギー的に武装している。1980年代及び1990年代を通して数ヶ国で影響力を持った学説の一つに、民営化論がある。この学説は、首尾一貫して公的供給よりも民間による供給を選好する説と解釈された場合には、公共部門に対して顕著で、即時的な影響―規模の縮小―を持つ。オーストラリア、ニュージーランドおよびイギリスはすべて、このタイプの積極的な民営化プログラムを実行したし、これらの国に比べて継続性は劣るにせよ、カナダ、フランス、オランダおよびアメリカ合衆国でも、この学説は適用された。

 

政党の政治理念は時に内部から、とくに党の活動家が作成した政治的アジェンダから引き出される。また、外部から、つまり有権者の間の諮問運動からもたらされることもある(囲みF)。たとえば、パブリック・マネジメントの諸問題については、1980年代のイギリスにおける保守党政権や、1984-90年のニュージーランドにおける労働党政権の理念は、公共選択学派の経済学者の理論から大きな影響を受けていた(Boston et al., 1996; Pollitt, 1993)。同様に、レーガン大統領の共和党政権はビジネス畑の顧問を大勢抱えていたが、その次の1990年代半ばの民主党政権はいわゆる「アメリカの最優秀企業から得る教訓」の使用には慎重だった(Gore, 1997)。

いくつもの理念の働きを総括して、ある学者は近年、以下のように述べている。

 

公共部門の改革は目下の流行なので、自尊心の強い政府であればこれを無視はできない。流行はいかに創られるのか、これは公衆に関わる政策として非常に興味をそそる問いの一つである。答えとしては、国際公務員(その行政改革への熱意は、不思議なことに、みずからの組織の扉の直前でストップする)の活動や、公務員、学者、いわゆる政策立案者らの会合によってもたらされる‘政策の拡散’がその一部となる(Wright, 1997, p.8)。

 

図2.1の囲みHは、市民からの圧力を示している。マネジメントの改革はふつう、一般市民の優先順序の最上位を占めないことは、すぐに認知される。男性であれ、女性であれ、道行く人々は独自の提案は持ち合わない。しかしながら、ただの市民が具体的な提案を山ほど持っていることはありそうにないにせよ、変化を求める圧力を加えることはできるし、時にそうする。たとえば、市民が銀行や建設会社、小売店で、きわめて迅速で、しかも顧客に愛想の良い取引に慣れれば慣れるほど、もたもたしていて柔軟性に欠けるうえに愛想の悪い郵便局や年金機関に欲求不満を募らせる。すると、こうした、国家機関の、低水準のサービスに対する不満が政治的代表者(囲みI、Jに記載されている人々)やマスコミに対して表明される。もっと劇的なのは、公務員が腐敗しているか、もしくは特定サービスがはなはだしく不公平な方法で提供されていると広く世間が信じた場合で、この場合には世論が動員されて改革を求める圧力を創り出そうとする。かくして、市民の意見が特定の改革を求める力を動かしたり形成したりすることはめったになさそうに見えるが、市民が背景となる重要な影響力となるような情況もありうるのである。

 

 

 

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