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だが、こうした方策には、こうしたサービスが組織化され運営される方法に対してより顕著な影響を持つ変化もまた含められる傾向があった。たとえば、行政諸経費の削減という観点から、能率化が実行されるかもしれない。営利部門や無償奉仕部門の、供給プロセスへの参加が促進されるのに加えて(促進されるか、もしくは)、経費節減と効率化に対するより強力なインセンティブを創り出す試みとして、関連部局や機関の大規模な再編成が行われるかもしれない(たとえば、Harrison et al., 1992を参照のこと)。

 

したがって、こうした背景的な圧力はそれ自身を社会経済政策に反映されるが、そうした政策は時がたつにつれてきわめて急速に変化する可能性がある(囲みD)。たとえば、ヨーロッパ諸国の中には、社会保障の節約を追求する際に、国家年金の資格が付与される最低年齢を引き上げた国もある。あるいは、1990年代半ばから末にかけて経済分野では、EU加盟国は、ヨーロッパの単一通貨制度への参加資格を得るために、マーストリヒト条約の「乖離縮小化」を満足しようとして苦闘した。このため、公共支出や公的債務には下向きの圧力がかかり、少なくとも短期的には失業者数をいくぶん増加させたかもしれない。したがって、これは関係諸国の行政部門の手段に少なからず、さまざまな影響を及ぼす政策であった。またこれは、‘超国家的’イニシアチブとして、ある一定の重要性を持っていた。メデイアは、公的事象を報道する時、世界規模の金融市場が不安定であることを訴えるために、より広範囲の(EUだけではない、もっと広域の)国際的なイニシアチブを求めることがおおいにある。中央政府が、信頼できる政策を樹立するに十分な協力をなしうるなら、個々の国家が失ってしまった、経済政策に対する支配権のうちのいくばくかを、国際レベルで回復することも可能だろう―だが、これは本書の主題ではないし、われわれの主題でもない。

 

ここで、第二の影響力を持つ、ひとまとまりのファクター―政治システムに関わるファクター―に話を移す。まず、このシステムの構造の一般的特徴、すなわち図2.1で囲みEによって示されるファクターを考慮に入れなくてはならない。これらの特徴は、マネジメントの改革を、程度の差はあれ、簡単にする。たとえば、ドイツでは、連邦レベルの大規模な再編成は不可能ではないにせよ、厳格な行政組織法がこれを困難にしているし、イギリスでは政府の組織変更を行うプロセスは長らく、簡単至極であった(Pollitt, 1984)。あるいは、合意による政治制度と連合政権をその特徴とするフィンランドをはじめとする数ヶ国は、政治制度がより敵対的なオーストラリアやニュージーランド、あるいはイギリスといった国々に比して、マネジメントの改革のプロセスがそれほど熾烈でもなければ闘争的でもない。最後に、ドイツや北欧諸国憲法が州/地域/市町村の自治体に与える、手厚い保護の例をあげよう。このことがふつう意味するのは、改革のプロセスを地域レベルまで拡大するのはむずかしいと、各国の中央政府は考えているということだ―ただし、地域レベルでの改革自体に対して、適正に一体化した政治的支援があれば、その限りではない。これを、1980年代のイギリスでサッチャー女史が持っていた権限と対比してみてほしい。同女史は、大ロンドン市と6つの大都市と政治や政策につき意見を異にした時、こられを実際に廃止した(Stoker, 1988, pp.142-4)。

 

政治制度の中には、その根深い構造によってあらわにされることが多い制約や束縛とは対照的に、動的要素もある。こうした要素の一つで、本書のテーマにとって重要なのはマネジメントについての新しい理念の公共部門への導入(囲みF)である。これは、この20年間、小売店から「グレートブリテン株式公開会社」まで、ほとんどあらゆるものを対象にした、マネジメントの方法についての理念に絶え間ない変化を創り出してきた。

 

 

 

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