日本財団 図書館


1.4 われわれのアプローチ

 

本書の本文は、論文の集大成である。過去の競合する研究の多くをひとまとめにしたものだし、そのために本書の著者二人は共同して、また各人で仕事にあたった(たとえばPollitt and Bouckaert, 1995; Halachmi and Bouckaert, 1995; OECD, 1997a; Pollitt, 1993, Pollitt and Summa, 1997a; Pollitt et at., 1997; Pollitt et al., 1999)。この過去の労作の集大成はそれ自体、体系化され改訂される必要があったため、その過程で、われわれはみずからの学説の基調をなしている変化のモデルを洗練し、さらに経験的なデータ、とくにこれまでの研究に含めなかった諸国についてのデータを付加的に集めることができた。

 

こうした集大成を行うに当たり、われわれは段階的に作業を進めた。第一段階で、パブリック・マネジメントの改革の一般モデル、とくに帰納的モデルが、われわれ自身や他の人々による過去の研究を再検討するという観点から、構築された(第2章を参照のこと)。このモデルは、マネジメントの変化にとって、あるいはこれに照らして重要な点の確認と、それらの相互関係における順位決定を可能にする、一つの枠組みを提供することを意図している。これはまた、これらの順位決定後に解釈や解説に織り込まれるべき重要点のパターンが国ごとに異なってもかまわないという意味で、比較モデルでもある。したがって、方法論として比較を信奉する学者なら「small-N分析」―現定数の事例のシステマチックな比較―と名付けるだろう(King et al., 1994)。このアプローチで、理論の検証と帰納的所説の構築が可能になるが、統計を用いて一般化するというより、むしろ‘分析的’である(Yin, 1994, p.10)。

 

われわれはまずマネジメントの改革モデルの提示に移ることにした。そのため偶然にも本書は論文につきものの「概観」の章を欠くことになった。その代わりに、必要に応じてもっとも関連性の高い文献を、独立した作業としてというより、むしろ本文の論理の流れという点から概観した。

 

第二段階では、まずわれわれが熟知している国々について作業することにより、そのモデルがそうした国々における発展の構造を詳述する方法として、またそれだけにとどまらない解説の手段として適正な意味をなすかどうか、検証しようとした。この段階で、モデルには何通りかの方法で変更・調整がなされた。

 

第三段階として、改訂されたモデルを、追加した対象国から比較検討するためのデータを収集するための指針とした。この作業は、OECDのような組織のヒロイックな努力にもかかわらず、依然として関連データがまったく存在しないか、信頼性または比較可能性が疑われる資料が多数存在するので、幾分フラストレーションのたまる作業だと知ったにせよ、方法論として比較を用いる学者であれば、意外ではないだろう。われわれは、以下のように書いたアメリカの第一人者アレン・シックに賛成したい。

 

マネジメントの改革は、その性質において、なにが成功で、なにが失敗だったのか、確固たる証拠のみに立脚した評価が不可能である。自分自身の判断は、他の研究者―マネジメントの改革が進行するのを見て、そのシステムがどのように機能するか、おおいに考えた人たち―の判断に耐えるように提起されなくてはならない(Schick, 1996, p.9)。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION