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本書では十ヶ国の、重大なパブリック・マネジメントの改革について検討するが、これら十ヶ国はすべて、この改革に不本意な人々の黙従が必要とされたし、それ以上に主導的政治家、とくに大統領、首相、大蔵大臣らの積極的な支援が必要とされた国ばかりである。第11番目の「政治主体」すなわち欧州委員会(EC)でえ、マネジメントの改革のためには、欧州委員会理事の「理事会」の改革事例においては、長老政治家の支援も必要とされた。記録に見るところでは、1980年代初頭から、オーストラリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、オランダ、ニュージーランド、スウェーデン、イギリスおよび合衆国の、こうした権力者らの間では再編成と「再処理」が流行した。欧州委員会は、「健全で効果的なマネジメント2000(=Sound and Efficient management, 略称SEM2000)」というプログラムに着手し、この後すぐに略称「MAP2000(Modernhizing Administration and Personnel 2000)」の名称の下に、また一つ別のプログラムを開始した。また、しかしながら、記録に見るところ、いくつかの国では、マネジメントの変革は、他国に比べてずっと緩慢な速度で、ずっと狭い範囲で推進した。次章では、改革過程の予備的モデルを提供し、これによって、こうした国による多様性の源を確認する。

 

高位の政治家とともに、高位の官僚は、ほぼすべての事例で、改革プログラムにおけるきわめて重要な行為者をもって任じている。実際、高位の官僚が主たる原動力であった国もいくつかあるくらいだ。これは見たところ、本能的に保守的であり、変化に反対する「お役人(マンダリン)」―多くの国々では、あちこちに、高位の官僚を描写する紋切り型の言い回しがある―にしては奇妙である。しかしながら、記録に見るところ、この場合は紋切り型には該当しなかった。ニュージーランド、フィンランド、フランスのように多種多様な国々において、「お役人」は改革の理念を創出し、それらを実現するのに意欲的だった。同時に、学者の間では、こうした現象を説明するために、新しい理論が生み出された。たとえば、ダンレヴィ(1991年)は、「役所主導型改革」モデルを構築した。このモデルでは、高位の官僚は、ある種の実行上の諸問題と距離を置くこと(分権化)と、組織の構造と規律の中で昇進し、より高位の、かつより大きな知的関心を抱ける役割を演じることによって、みずからの部下を再編成することから実際に利益を得る。むろん、上級や中級の官吏は、改革にそれほど積極的ではないかもしれない。そうした官吏にとっては、改革とは職業の不確実性が高まったり、新しい技能を拾得する必要が生じたり、もっと激務をこなせという圧力となるかもしれないからだ。このことに関してライトは次のように記している。「最新の証拠が示すところ、官僚制の頂点に立つ者は、改革プログラムに対するアレルギーが皆無である。というのは、そうしたプログラムは全体的に、より下位の者に、もっとも痛烈な影響を与えるものだし、政策志向の管理統制主義にとっては興奮を呼ぶ機会をより多く提供するものだからである。」(Wright 1997, p.10)

 

政治家やその上級官吏である顧問、ある種の「部外者」グループは、―少なくともいくつかの国では―改革の過程において傑出した役割を果たしてきた。こうしたとくに言及するに値するのは、三つのグループ、すなわちマネジメント・コンサルタント、独立自営の「シンクタンク」、そして学者である(こうしたグループの一つ一つよりもっと活発に活動している個人もいるが)。合衆国、オーストラリア、およびイギリスでは、マネジメント・コンサルタントが大量に用いられた。

 

 

 

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