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・われわれは能力が実質的に向上したという証拠を求める必要があるのと同様、マネジメントの改革の合法化という局面にも関心を向ける必要がある。改革の実行を単に宣言し、議論し、これに着手するだけであれば、たとえ後に「実質的な」影響が不明瞭になったり、かえって逆効果となったりするにせよ、何人かの政治家や官僚には利益がもたらされるかもしれない。

 

・変化を意味する言葉―「改革」、「転換」、「再設計(リエンジニアリング)、「近代化」―そのものに、この語によって詳述されるか、もしくは表現されるものの速度や性質、価値についての仮定条件が多数内包されている。マネジメントを論じた語句や文章の分析には、だれが語っているのか、聴衆として誰を想定しているのか、これを注意深く確認する必要があるし、価値や習慣、ものの見方は時の流れの中で変化すること、それに言葉の意味は不安定で可変的であることを思い起こす必要がある。たとえば、フィンランド語には英語の「パブリック・マネジメント」に正確に相当する語がないし、フランス語の‘ジェスチオン・ピュブリーク(gestion publique)(訳注:gestionは経営、運営、管理の意、publiqueは英語のpublicにほぼ相当する)’には英語の「パブリック・マネジメント」とはやや異なる意味合いが含まれている。しかしながら、こうした語義の不安定さは、ある言葉が元とは異なる文脈や集団において用いられれば、‘同一言語’においても起こる。

 

・さらに、マネジメントに関する改善というレトリックがひとたび威力を持ったとたん、そのレトリックはそれ自身の論理や用語集、内的モメンタムを持つ「語りによって結ばれた共同体(community of descourse)」となる。こうした現象がどのようにして起こりうるか、については、さらに次章において論じる。

 

1.3 パブリック・マネジメントの改革とは何者か

 

‘なぜ’改革が提案されるか、パブリック・マネジメントとはなにを意味するか、についての上述の理念を補完するために、ここでかかる行動に関与するのは‘だれ’かという問題に話題を転じよう。まず、ある意味で官僚のほぼ全員が「関与」してきたことを認めるべきだろう。というのは、多くの国々において、公共部門の組織はどれも、過去20年間の改革から、ある程度影響を受けてきたからである。同じく、市民のほぼ全員もまた巻き込まれてきたし、とくに公共サービスの提供方法の変化によって影響されてきた。これらのサービスとは、たとえば、ベルギー、フランス、イタリー、ポルトガルおよびイギリスにおける特許状の発行、オーストラリア、フランス、オランダ、ニュージーランド、イギリスをはじめ多数の国々における、航空会社、電信電話会社、水道会社、郵便事業といった主要な公益事業の民営化があげられる。

 

しかしながら、だからこそマネジメントの変化による波紋がほぼ全人口におよぶほど広がる可能性があることを心に明記することは重要ではあるが、本章では、重要な活力源―集団であれ、個人であれ、改革の過程を可能ならしめる勢いや理念、技能を供給するもの―が主たる関心事となる。

 

 

 

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