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これは「出力リンケージ」である(つまり、国家と市民社会からの情報と資源を伝達する役目を果たす)が、「入力リンケージ」でもある(市民社会における行為者からの要求を国家に伝えもどすからである)。これはまたしても正鵠を得た定義であり、行政は「双方向通行」であること、そして金銭的に最高の価値を達成するための単なる技術演習とはまったく違って、国家権力の手段であることを思い起こさせる。実際、ピエールはこれに続けて、政治的キャリアパターンと官僚キャリアとの間で得られる諸関係のタイプを、行政の特徴を決定する上での重要な変数の一つとして確認している(Pierre, 1995, p.208)。

 

ピエールは行政を「出力リンケージ」として詳述することにより、パブリック・マネジメントの研究においても実践においても広く用いられている、入力/過程/出力/結果モデルもまた、引き合いに出している。実際、このモデルの使用は根強く定着しているので、ここで一つ遠回りして、このモデルを適当に確立し、われわれが重要用語を準備しようとしていることの意味を明らかにするなら、それだけの価値があるだろう。

 

われわれのこのモデルの用い方は、かなり正統的である。われわれの考えるところ、入力/出力モデルはさまざまに異なるレベルでの応用が可能である。ピエールはみずからの分析装置―出力を作り出す「もの」―として公共行政の全装置を用い、高度に一般化されたレベルでこれを用いた。もっと平たく言うなら、入力/出力モデルはプログラム(たとえば、保健、雇用創出、道路建設)か、あるいは組織(英国の内国歳入庁、運転免許証交付局)に適用される。組織および/もしくはプログラムは、ある特定の社会経済的要求(単数もしくは複数)を提示する。組織および/もしくはプログラムは、そうした要求に関わる‘目標’を確立し、それらの目標を追求する活動を実行するための‘入力’(スタッフ、建物、資源)を獲得する。この時、これらの、出力を創り出すために組織内で行われる活動が‘過程’である。したがって、過程には、たとえば学校で教える、倉庫内で記録をとりラベルを貼るなどの作業が含まれる。この‘出力’はこれらの過程の生産物―組織が組織外の世界へと‘送出’するものである(学校の卒業資格や通信簿、あるいは倉庫内作業の例なら、完成して運び出される在庫品)。この時、これらの出力は環境(とくに、それらの出力が明確に照準を定めた個人やグループ)と相互に影響し合って「結果」へと向かい、「長期間」のあいだにより根本的な「影響」をもたらす(学生は就職してみずからの適性を発現するし、倉庫の例では在庫品は購入者によって使用される)。「結果」も「影響」も双方とも‘成果(outcome)’と名付けることができる(「結果」は「中間結果的生産物=intermediate output」と呼ばれることもあるし、「影響」は「最終的成果」と呼ばれることもある)。究極的には、過程の‘価値’も出力の‘価値’もともに成果の上にとどまる。これらの重要用語の間の関係を要約したのが図1.1.である。

 

 

 

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