ウダヤナ大学文化・観光研究センター
面会者:Dr. Pitana Brahmananda
日時:2000年10月17日
場所:デンパサール・ウダヤナ大学医学部
担当者:名取、三木、Ari Tamat
観光政策の見直しの必要性
観光政策において、現在の観光促進と環境保護の優先順位を見直すべきである。特に、観光開発に伴う農地転用は1985〜1998年に年間平均800ha/年行われ、その中1985〜1991年は年間1000ha/年にも昇った。
大型開発と中小型開発
1971年にはじめてバリ州の観光マスタープランが制定され、ヌサデュアなどで、地域との連結の少ない大型ホテル団地(エンクレーブ型開発)が進められた。それに対して地域に密着した中小型の観光事業を比較すると、
大型開発
1. 地域住民が経済的に除外される
2. 地域間の格差が生じやすい
3. 農地の土地利用転用が加速する
4. 地権転用に従い文化的基盤が損失される
5. 環境への負担が大きい
中小型開発
1. 地域住民への利益が大きい
2. 農地の土地利用転用が少ない
3. 文化的基盤としての土地が保護される
4. コミュニティを維持する
今後のバリ島観光政策のあり方
1. 大型事業の廃止・地域の中小型観光事業の推進
2. 滞在期間が短く、数が多いマスツーリストではなく、滞在期間が長い「クオリティーツーリスト」の優先─「バリ島を安売りしない」という姿勢
バリ島では、今まで地域政策の成功へのカギとなったのは、地域コミュニティ組織(バンジャール・スバク等)との協力である。
観光の文化的影響
バリ島での観光の発展は、全分野において大きな経済的効果をもたらすとともに、文化的な影響も与える。一般的にいえば、観光はバリ文化を再生し、活性化させたといえる。観光は文化芸術活動を需要し、資金を与える。しかし、文化の内容自身には次の効果がある。
1. 現代文化の吸収とバリ様式化(バリ人が自分の文化に誇りを持つ証拠でもある)
2. 非神聖化・冒涜化(神聖な様式・芸術を一般化すること)
3. 商品化(芸術・文化資産を観光客に売り出し、意味を薄くすること)
4. 階層・ジェンダーなどによる人間関係の変化
インドネシアにおけるNGOの種類
1. 行政・国際機関と協力し、支援を受ける「(通称)レッドプレートNGO」
2. 営利目的で事業展開をする会社型の「(通称)イェロープレートNGO」
3. 一般市民や専門家が設立し、非営利で小型の「(通称)ブラックプレートNGO」
Pitana氏は、現在の縦割り行政に対して、観光と観光地を総合的に管理することを目指し、2000年5月にBali Tourism BoardというNGOを設立。