現状の間題点―(5)疑似体験型、(7)製品体験型のように本来ならば体験できない技術を部分的に置き換えたり、製品の状態で体験するなど工夫が見られる。工夫次第で、現在の設備・製品でも十分対応できるのである。また、体験・見学に開かれた工房の公開されたことによる影響評価がまだできていないために効果を疑問視する工房もあった。だが、一方で技術への理解が深めてもらえることや商品のPRになっているという声もあり、今後の影響評価の必要性がある。
技術体験への期待―工房の見学受入は、取り組み方次第で見せ方を工夫できるので、公開に消極的にならず、自分達の技術に誇りを持って観光客に公開して欲しいものである。
〜見学から験学ヘ―「中で何をやっているのか判らない。」そんな工房が多い中、本論で紹介した工房では工夫をしながら作業の様子を一般観光客に公開している。工房主達は自分達が作る製品・作品のことだけではなく関わっている伝統工芸の良さをもっと広く理解してもらうという目的を持ちながら、ビジネスとして確立している者、あるいは生きがいとして出逢いを楽しんでいる者など捉え方は様々である。しかし、多様化していくこれからの都市観光において、このような工房の見学・体験は地域特有の観光資源としての益々重要性を持っていくと考えられる。これらの工房の魅力を活かしていくためには公開の方法を検討しそれぞれの工房にあった形でコーディネートしていく必要があるのではなかろうか。
従来の見学から一歩進んだ験学へ、その変革は技術体験型観光がこれからの都市に欠かせない観光資源になる第一歩なのである。