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その歴史のなか、外部との交通手段は、海運、鉄道、自動車と移ってきており、港や駅前地区に各種の商用に応える旅館が立地した。後述するが、当地でのツーリズムの展開には、これらの観光需要に先行した宿泊施設が、少なからず貢献しているようである。

馬産地としての歩みは、表1に主な流れを示した。交通公社が評価した「牧歌的な車窓風景」は、昭和40年代を通じて、できあがったものであろう。

 

表1. 目高地方一帯における特化的馬産地形成までの主な歩み

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*馬産地としての中心性が増すと、有力種牡馬・馬産業を補完する関連業者が集まり、購買者も優先して訪れるようになる。他地区の馬産は条件の不利が増して縮小し、日高の特化は一層進んだ。

 

III. 競走馬の牧場見学史

本章では、牧場に馬を訪ねる観光者の数、その周遊状況、関連観光施設等の開設状況、自治体の動きなどに言及し、ツーリズムの流れを外観する。

 

(1) 牧場訪問観光のルーツ

ツーリズムの形態としては、日高地方に先立ち、千葉県・下河辺牧場に、詩人の寺山修司が「こよなく愛した」という競走馬を訪ねた例(昭41)がある12。これは、競馬好きでも知られた寺山が、親交を得た馬主らの牧場訪問を模して実行したものと推察される。

競馬は、その興行を通じ、「競走馬を持つ(馬主になる)」という特権階層のレジャーと、大衆レジャーとの、2タイプのレジャーを提供している。前者の「競走馬を持つこと」には、「馬を選ぶ」「買う」「成長・夢を見る」「調教師などのレクチャー」「レース」「賞金等の獲得」「自慢」など多くの娯楽要素が含まれる。

 

12 石川喬司(1983)に拠った。

 

 

 

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