K丸一航士は、潮岬南方沖合で日ノ御埼方向に向けて右転する船が多く、これらと進路が交差するおそれがあり、また、左舷後方に数隻の自船を追い越す同航船を認めていたものの、前方には反航船もおらず漁船も陸岸至近で操業しているたけであったので気を許し、操舵室の椅子に腰掛けて前路の見張りのみを行って続航した。
4時41分、K丸一航士は左舷正横後6度、1浬に日ノ御埼沖合に向かうH号を視認し、その後、その方位が変わらず前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近したが、周囲の見張りを十分に行っておらずこのことに気付かなかった。
4時45分、K丸一航士は椅子から立ち上がって船橋内右舷側後部の海図台に行き、海図作業に専念し4時46分、H号が避航の気配を見せないまま左舷正横後5度、0.5浬にまで接近したものの、依然このことに気付かないまま同船に対して警告信号を行わず、さらに間近に接近しても衝突を避けるための協力動作をとらないで続行した
4時51分頃、海図台のところから前方を見たK丸一航士は、至近に迫ったH号を初認し、あわてて操舵スタンドに戻って右舵一杯をとったが間に合わず、4時51分、潮岬灯台から236度6.8浬の地点においてH号と衝突した。
当時、天候は晴で風力3の西風が吹き、日出は4時52分で視界は良好であった。
H号の経過
H号(船長以下20名で運航)は7月3日17時48分、三重県四日市港を発し、神戸港に向かった。
7月4日4時36分、H号一航士は、潮岬灯台から212度6.1浬の地点において、針路を日ノ御埼沖に向けるよう300度に転じたところ、右舷前方を西航するK丸と進路が交差する状況となったが、付近を同航する船舶が自船と同様、潮岬南西で針路を右に転じて日ノ御埼沖に向かう態勢となっていたので、右方から接近する他船はいないものと思い、周囲の見張りを十分に行わないまま、K丸の存在に気付かないで続航した。
4時41分、H号一航士はK丸を右舷船首50度1浬に探知し、その後、その方位が変わらないまま接近したものの、これに気付かず航行し、4時50分頃、右舷間近にK丸を初認し、左舵一杯としたが間に合わずK丸に衝突した。