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イ. オンブズマン制度の仕組み

このオンブズマン制度を運営するのは、組織委員会とオンブズパーソン委員会である。前者の組織委員会は5名からなり、オンブズパーソンの委嘱・解任・研修・予算、年報の発行などを行い、オンブズパーソン委員会の上位監督組織としての役割を担う。後者のオンブズパーソン委員会は18名からなり、苦情の調査、改善勧告、登録者への訪問調査などを行い、それぞれ「高齢者部会」「障害者部会」「児童部会」の3部会体制になっている。この体制でもわかるように、東久留米市の「民間福祉オンブズパーソン」は、その活動分野が高齢者福祉にとどまらず、障害者福祉、児童福祉と福祉全般に及んでいることである。また、実際の調査をする「オンブズパーソン委員」は、社協に登録しているボランティア団体・個人2,000名にアンケートで希望を募り、登録を希望した75名に対して選考資料を送付、学歴・職歴・取得免許・資格のほか、希望する部会、登録希望の動機や活動に期待することなどを細かく調査し、組織委員会で回答のあった46名から18名を決定した。そして、2月から7回にわたり事業の概要から法律問題、市の福祉行政、介護保険制度、具体的な調査の仕方と苦情処理のロールプレイングまで研修を行った。

では、この東久留米「民間福祉オンブズパーソン」の設立趣旨はどこにあるのかを、設置要綱から確認してみたい。まず、制度設置の必要性として「福祉サービスの担い手やサービスの内容が多様化し、人権擁護の意識が高まりを見せる中で、福祉サービスの受け手である高齢者、障害者、児童等の個人の尊厳の確保、人権擁護システムのあり方、福祉サービス提供者のサービスとモラルの向上などについて、最近市民の間で広く関心を持たれている」とし、今までの行政の基準や指導だけでは十分に市民に対応できないので、オンブズパーソンが「深く細やかに福祉サービスの提供者と利用者の間に介在し、相互理解を深めつつ、個別の苦情や要望の処理、提供者の福祉サービス向上への働きかけ、利用者への必要な情報提供等のシステムを作ることが、今、市民から強く求められている」とされる。そのため、「サービスとモラルの向上を望む提供者との契約」を基盤とした「民間福祉オンブズパーソン制度」を創設することになったのである。

そして、東久留米福祉民間福祉オンブズパーソン制度は、「市民主体」を前提としているため「現時点では、市社会福祉協議会の関係機関として出発するが、将来的には、制度運営のノウハウを蓄積し、財政基盤を確保した上で、当会から分離した完全独立の団体に充実・発展してゆくことが望ましい」とも謳っているのである。

このオンブズパーソン制度は、2段階方式をとっており、上位監督機関である組織委員会の委員の任期は3年間であり、再任はできるが3期までは認められる。そしてこの組織委員会は、上位監督機関であり、第8条の「業務」として、1]福祉オンブズパーソン候補者の選定及び依頼等に関する事務、2]福祉オンブズパーソン解任に関し、必要な調査を行うこと、3]福祉オンブズパーソンの研修計画の実施、4]予算及び事業計画の執行並びに助成金等に関する市社協との協議、5]毎年事業年度の終了後、前事業年度の福祉オンブズパーソンの活動に関し、年報を編集し発行すること、6]その他、組織委の議決に基づき、行うものと決めた業務、を行うこととされる。そして、組織委員会は、福祉オンブズパーソンと協力して3]、4]、5]の業務を行わなければならない。

 

 

 

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