なお、苦情や相談には、サービス利用者からの苦情ばかりではなく、ホームヘルパーに対する「セクハラ」やホームヘルパーの賃金等の問題など、事業者からの相談や苦情もある。そのため、大田区は、民間事業者やケアマネージャーの研修、第三者機関としての事業者協議会(所管:介護保険課)の整備推進も図っている。
大田区では、これまで区が保健・福祉・介護サービス事業を手がけてきたこともあり、事業面において先行した区と新制度開始後に新規参入した民間の事業者等との間にサービスの格差があるため、「大田区介護保険推進協議会」を設置し、上記のような相談・苦情内容等に「事業者の指定基準に従ってサービスを評価」していく方向で対応していくための「仕組みづくり」に取り組んでいる。
同協議会は、区長の委託した学識経験者1名、保健医療6名、福祉6名、地域5名(内4名は公募)から構成されている。同協議会の会議は、原則として公開とされている。なお、同協議会は、平成12年11月から、(1)介護保険制度の情報提供に関する事項、(2)利用者のサービス選択権の確保に関する事項、(3)介護サービスの基盤に関する事項、(4)相談及び苦情対応体制に関する事項などを検討し、平成13年3月末までに報告書をまとめていく予定である。
ウ. 「高齢者福祉オンブズマン制度」の仕組み
大田区は、高齢者福祉サービスに関して、これまで担当部局や広聴相談の窓口などを通じて区民からの苦情や意見を処理してきたが、これまでの福祉の在り方を大きく変える公的介護保険制度の導入に合わせ、新たに第三者による苦情処理の機関としてオンブズマン制度の導入を決めた。1]区が行う高齢者福祉サービス(介護保険制度によるサービスも含む)を受けられなくなったり、受けようとしたサービスの申請が認められなかった人のために、また2]保健・福祉・介護サービス全般の向上を目指すために、大田区は平成12年3月に「大田区高齢者福祉オンブズマン条例」を制定し、「大田区高齢者福祉オンブズマン制度」を4月から施行している(図II1-(6)を参照)。
「大田区高齢者福祉オンブズマン制度」は、区民からの「高齢者福祉サービスおよび介護保険制度に係るサービス」(高齢者福祉サービス)に関する区民の苦情などを、オンブズマンが公正かつ中立な第三者の立場で処理する仕組みで、区長の附属機関として設置されている(「同条例第1条」)。
オンブズマンは、区長から委嘱され、定数は3人(学識経験者2名、弁護士1名)、任期は3年(1期に限り再任が可)と規定されている(同条例第6条)。報酬は、月額12万5千円である(大田区高齢者福祉オンブズマン条例施行規則第2条)。
なお、オンブズマンには、区民の権利利益を擁護するため、公平かつ適切に職務の遂行に努め、職務上の秘密を守る責任が義務づけられている(同条例第2条)。事務局は企画部広報公聴課(同規則第14条)。現在、オンブズマンは、第1〜4火曜の午前中、交代で高齢者福祉オンブズマン室(区役所本庁舎)で執務している。