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パネルディスカッション

『小児難病と闘う』

〈パネリスト〉

大川治夫氏(茨城県立こども病院院長)

宮本泰行氏(茨城県立こども病院新生児科部長)

伊藤洋子氏(日本二分脊椎症協会茨城支部)

湊孝治氏(茨城県保健福祉部保健予防課長)

〈コーディネーター〉

松井陽氏(筑波大学臨床医学系小児科教授)

 

新生児医療から見た小児難病について

小児の難病と呼ばれる疾患に最初に直面するのは、新生児医療の従事者が多いと思われますが、最近は周産期医療の進歩により、出生前の診断が可能になってきました。

生まれる前に赤ちゃんの状態や病気を診断し、その後の方針の手引きとする方法です。一番ポピュラーなのは、音波を使った超音波断層検査です。この器械では、性別だけでなく、赤ちゃんの形態や手の形まで分かります。

これ以外にも胎児の付属物である羊水や胎盤から検体を採取し、染色体などを検査する方法やへその緒から直接血液を採取して検査する方法もありますが、1%前後で流産の可能性があり、安全と言えないのが問題です。

もし、母親の血液を採取することで、胎児の情報が得られれば、流産の心配もなく、検査が行えます。妊娠のかなり早期から赤ちゃんの血液は母親の体内に入っていますので、もしこの血液を母親の血液から分離、検査ができれば、妊娠早期に流産の心配がなく診断が可能となりますが、まだ実用化には至っていません。

このような出生前検査を行うことにより、赤ちゃんの予後がよくなる場合と、そうでない場合があります。よくなるのは、出生後に行うべき治療の準備があらかじめでき、出生後直ちに治療が開始できる場合です。黄疸に対する血液の準備や横隔膜ヘルニアなど、小児外科疾患に対する分娩時の処置などがこれに該当します。

治療法がなく、予後の改善が期待できない疾患の場合でも、両親が生まれてくる赤ちゃんの病気をあらかじめ理解し、ショックや怒りの気持ちを乗り越えた状態で赤ちゃんと対面できると、大変大きな利点となります。今回紹介したケースでも、致死的な奇形を持った赤ちゃんが亡くなるまでに、親としてできることは全てやってあげられたという気持ちを持ってもらうことができました。

小児難病に対する医療の方向性の一つとして在宅医療があります。病気を持つ小児にとって、家族と共に生活しながら治療を継続する在宅医療は、理想的であり、いろいろな困難を乗り越えて実施されています。特に人工呼吸器を装着しているため、従来は退院が不可能であった小児に対しても在宅人工呼吸器管理が行われ、成果を上げています。

患児のQOL改善のためには、医療費補助や社会福祉制度などの整備、病院と家族との連携など、より在宅医療を奨めやすい環境作りをしていく必要があります。加えて、小児難病の診療には、多くの診療科、コメディカルスタッフの存在と協力が不可欠であり、一カ所で小児を包括的に診療できる施設が身近にあることが望ましく、これらの整備も重要です。

 

身近な地域でトータルな医療を

日本二分脊椎症協会茨城支部は、現在33家族が在籍しています。県内には会の存在をまだ知らない方も多いかもしれません。主な活動として、年に数回の講演会、交流会などを通して、情報交換を行っています。

現在、私の娘は中学3年生です。今から14年前のことです。出産後にほっとしたのもつかの間、背中の傷が発見され、小児外科に診療してもらうことになりました。生まれたばかりの娘は、私の頭上で、かすかな泣き声をあげてました。

その時の背中の傷が将来的にも大きく影響するとは、全く想像できませんでした。手術をすれば、きっと治ると希望をもって先生にお願いし、生まれて間もない娘は手術室に向かいました。それがどんな手術だったか、のちに説明を受けた時には、「なぜ」「どうして」と疑問でいっぱいでした。今まで耳にしたことがないたくさんの病名をすぐに理解できないまま、とにかく病院に通いました。

娘は小児外科、整形外科、リハビリと複数科にまたがって受診していました。その他に泌尿器科、脳神経外科、眼科などに受診されている方もおられます。週に何日も、それも一日がかりで病院に通ったり、病院のはしごをして過ごす生活が何年も続きます。子どもの成長に大切な遊びの時間は、病院の待合室や車での移動でとられてしまいます。

 

 

 

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