第3回ピーターパンこども基金シンポジウム
小児医療・難病の現状とその将来
第3回ピーターパンこども基金シンポジウムが8月27日、茨城県水戸市内の常陽藝文ホールにて開催されました。
「小児医療・難病の現状とその将来」をメーンテーマに、基調講演では小児医療の進歩や問題点について、茨城県の現状を交えた解説があり、続くパネルディスカッションでは、医療・行政・親という各立場から、現状報告や意見交換が行われました。
主催/朝日新聞社 後援/財団法人日本児童家庭文化協会・ピーターパンこども基金・茨城県立こども病院・茨城県・水戸市・水戸市教育委員会・茨城放送 協賛/武田薬品工業株式会社
基調講演
『小児医療の進歩と間題点』
小児医療の目的は、小児を病気から守り正常な発育を促すことです。私が取り組んできた小児外科では、初期には腹部内臓の手術から始まりました。生まれたばかりの赤ちゃんの命を何とか助けることが問題でした。麻酔が必須ですが、手術なしでは命がなくなる場合にのみ麻酔をかけます。
日本では戦後、乳児死亡率は高く、千出生に対して60というような値に達しました。その後、栄養の改善、伝染病の克服などの結果として、次第に低下して、小児外科医の努力も報われるレベルになりました。
現在では、世界中で最も乳児死亡率が低い国となり、千出生に対して3〜4人に至っています。これには未熟児医療の進歩、検査技術の進歩、中心静脈栄養法、医療行政における援助などによるところが大きなものと考えています。
日本小児外科学会では1964年より、5年に一度の年間全国小児外科手術統計を行ってきました。
これによると出生数が減っているにもかかわらず、症例数はどんどん増えて、現在1964年の5倍程度にまで増加しています。外科の技術の普及を意味するものと考えます。
新生児外科各疾患における死亡率の低下も目覚ましく、全例平均死亡率は10.5%に至っています。但し、横隔膜ヘルニア、さい帯ヘルニア、食道閉鎖症などの各疾患において、低出生体重児での治療成績は非常に悪いと言わざるを得ません。
ここで最近まで20年間勤務していた筑波大学でのデータを示します。最近では年間60例に近い症例を集めています。新生児の手術として、最初に呼吸困難について述べます。呼吸器系の異常では人工呼吸器管理を必要とするため、入院生活も長期に及び、子どもの生活は非常に制限されます。
ここに示すのは、さい帯ヘルニア、強い脊椎側弩症を伴う気管軟化症で2歳半から在宅呼吸器管理の可能性を検討し、主治医、看護チーム、保健所、かかりつけの近医、医療器会社など関係各方面の努力により、4歳から外泊を繰り返しながら、自宅療養になりました。
家族の努力、工夫も素晴らしく1年後には人工呼吸器を必要としない状態にまで回復しました。今後ともこのような取り組みを続けたいと思います。
次に二分脊椎(脊髄々膜瘤)について説明します。出生時、脊髄の一部が背部の外表に露出しており、様々な神経障害を起こします。出生後6時間以内に手術を行い、神経を髄膜内に戻す手術を行います。神経の損傷や付着していた細菌による脳脊髄膜炎を防ぐためです。
二分脊椎では脊髄の高さにより異なりますが、様々な程度の脊髄障害、水頭症、排尿困難、便秘、下肢機能障害など複数の診療科に渉る障害を併せ持つため、小児外科医としては、できるだけ多くの領域をマスターし、新生児期からトータルケアの中心的役割を持つことが重要であると考え、努力してきました。
小児外科の分野でこれまで努力してきたことは、乳児死亡率を如何に低下させるかということでありました。実際には茨城県の乳児死亡率がかつて全国最下位に近い状況であったものが上位クラスにまで改善されて参りました。
重症例の救命が果たせるようになってきたことに伴い、新たに生じてきた問題点があります。この点については自験例に関して調査致しました。
431例中の26例に長期入院、長期介護を必要とすることが見られました。このうち多いのは二分脊椎に伴う中枢神経系の障害、及び染色体異常でした。長期呼吸管理、長期中心静脈管理などについては更なる努力研鑽が必要であります。
最近では胆道閉鎖の手術後の胆汁排泄不全に対して、肝臓移植が多数行われていることが、管理上の新たな大きな問題を提供しています。