このように、里親制度不振の要因については、社会的な要因、制度的な要因等様々な要因があり、非常に複雑な問題を抱えていると考えられる。
3) 埼玉県の里親制度
1)と2)では里親制度の現状は、登録里親数、委託児童数ともに危機的な状況であることにふれてきた。ここでは、全国的な里親制度の不振の中で里親数の多い埼玉県の里親制度についてなぜ里親数が多いのか、みていきたい。
松本武子(1991)は埼玉県の里親数の状況について、昭和62年度末において、登録里親448、委託児童249で、実数で束京都に次ぐ里親県である、と述べている。なぜ、埼玉県では里親が多いのであろうか。
埼玉には6つの児童相談所(中央、浦和、川越、所沢、熊谷、越谷)があり、各児童相談所が中心になって里親委託を行っている。埼玉の里親制度の発展について、松本武子(1991)は人事異動について触れている。そこでは「埼玉県では、児童福祉職は原則として福祉関係機関で異動が行われている。したがって、まったくのデスクワークから児童福祉司にまわされることはありえないし、児童福祉司がケースワークに無縁の事務職にまわされることもありえない。