日本財団 図書館


三歳児未満の院外家庭委託については「保育委託」又は「保育預け」と称されていたということである。

次に、東京市養育院渋沢栄一による院外委託について、取り上げてみる。東京市養育院の保育委託児の状況は「明治末年から大正半ばにかけては毎年100人前後の新規委託児があり、年度末現在の委託児童数は最高時の大正5年には500人を超える。しかし、その後は委託の減少の一途をたどり大正後半期以降は昭和2年を例外として新規委託は毎年数人という状況が続き、年度末現在の委託児は昭和4年には100人を割ってしまう」(松本園子、1986)という推移をたどっている。院外委託をめぐる論調について松本園子(1986)は「富田像吉の一連の論文にみられるように、児童の精神発達の面からの施設収容の問題点と、家庭生活の教育性を根拠とする里親委託積極論があった。富田の場合、自身の岡山孤児院での経験が基礎にあろうが、このような里親積極論は1800年代末から1900年代にかけての欧米における施設批判・家庭重視論の影響が濃いものであった。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION