つまり、母性的なケアや親的な機能を持っている家庭的な養育環境をどのように子どもに配慮していけるのかを考えていくことが、子どもが家庭を持つ権利を実現させていくために必要な課題であると考えられる。
2) 子どものウェルビーイング
ウェルビーイングの理念と里親制度について考えてみる。ウェルビーイングとはどのような理念なのであろうか。高橋(1998)は、子どものウェルビーイングについて「人権の尊重・自己実現、子どもが子どもらしさを保ち、自らの潜在的な可能性を開花させつつ生き生きと生活している状態」ととらえている。柏女(1997)によれば、ウェルビーイングという概念が注目されたのは「WHO憲章の前文中の健康の定義、すなわち『健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的に良好な状態であり、単に疾病または病弱の存在しないことではない』においてである。ウェルビーイング概念の解釈については諸説あるが、端的に言えば、人としての個人の尊厳が確保され、自己実現を可能とする状態と考えられる」。さらに柏女(1997)は、社会的養護を必要としている児童のウェルビーイングを考えるときに「まず大切なことは、…家庭環境を奪われた児童に対しても、家庭にある児童と同様の当たり前の生活を当たり前のように送ることのできる環境を用意することである。