III. 調査結果からの考察
平成6年にわが国で批准された「児童の権利に関する条約」の前文では、「児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長するべきであること」を認め、さらに第六条第二項で「締約国は、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する」と謳っている。しかし、実親の下で生活することが困難な子どもらを、愛情豊かに苦労を惜しまず社会的に養育を行っている養育家庭を支えるための社会的環境が十分に整っていないといえる調査結果がみられた。
そこで、養育家庭を取り巻く諸条件とその問題を明らかにすることで、養育家庭制度の拡充の方向性を以下の点から考察する。
1) 養育家庭の相談ニーズと解決姿勢
調査の結果から、ほとんどの養育家庭は里親・里子の関係を周囲の人々に公表しており、約7割の養育家庭が同居している家族以外の人にも子どもの養育上の問題について相談を行っていた。また同居している家族以外の人に相談経験のない養育家庭の理由をみてみると、「相談することが特にないから」(61.5%)、「同居している家族に相談することで解決しているから」(30.8%)となっており、相談ニーズが生じていないためであることがわかった。