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自分の感情をあまり表わさないBもAの帰省を心待ちにしたり、久し振りに帰省したAと二人で夜を徹して話し合うようにもなり、離ればなれになってかえって心の絆は強いものになったのではないかと思います。

(13) 社会人を目指して

Aは、全寮生活から忍耐力に自信はついたようだが、自分のやりたい仕事は何なのかははっきりせず、高校三年生の八月「僕は理系より、文系の大学に行きたい。」と言い、学校の先生を慌てさせた。理系の学科を授業で受けつつ、夜、彼のために文系の勉強をさせて下さるという学校側の特別の配慮もむなしく、受験に失敗した。親に迷惑をかけるので就職しようと考えていたAには、自分の目的を達成させるべき、予備校へ行き、再度の挑戦を進めた。半年程して、「僕は、大学へ進んだ友達を見ていて、進学しても、ただ目的なく遊びそうな気がする。大学よりむしろ、専門学校へ行き、歯科技工士になりたい。しかも家から通える所でない大阪へ行く。とさっさと受験し、入学式までの数ヵ月、他の学生が頑張っているのを横目に一人暮しに役立つとレストランでのアルバイトを始めた。翌年、三月、学生マンションに入る時、必要な事もある。とちゃっかり貯金通帳をもって専門学校入学式を待った。

 

 

 

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