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理事長 私どもも、関係者の熱意というものをひしひしと感じております。

遠山 そうですね。それもやはり、作品が良かったからなんですね。

理事長 ちょっと宣伝がましくなりますが、先生がご覧になって、特にここが聴きどころだったというところはどこでしたでしょうか。

遠山 どこがよかったと言われると困っちゃうけど、どこも良かったと(笑い)。三善さんは決して手抜きする作家じゃないから、どこにも非常な緊張感が持続されてますからね、一般的にオペラを見るようには気楽には聴けないという面はあったかもしれないけど、同時に、聴き終わった時には感動というか、充実感というものが非常に大きかったと思いますね。必ずしもオペラティックじゃない台本を使って、それを無理に変なオペラにするんじゃなくて、台本の性格に沿った形でああいうふうに音楽にされたということが、成功の原因だろうと思いましたね。

理事長 原作『遠い帆』(小沢書店刊)からもうかがわれるように、もともとはかなり文学的な台本だったわけですね。ところで、お客さまの感想として「言葉が聴き取りにくかった」といった意見も聞かれたのですが…

遠山 オペラで言葉ってものは、ある程度わからなくても仕方がないだろうと私は思うんですよ。わからなくてもいいって言い方はあんまりよろしくないけれど、批評家が「言葉がわからない。歌い手が悪い、作曲家が悪い」とか言うけれど、もともとそんなにわかるもんじゃないはずなんですね。バイロイトに行ってワーグナーを聴いている時にドイツ人をつかまえて「言葉がわかるか」と尋ねてみたことがありますが、ドイツ人だって3分の1もわからないという。イタリアのオペラだってそうですよ。日本のオペラだって、そんなにわかるはずがないんですよ。それをわからせようと思うと、日本で完成された「語りもの」スタイルにすれば言葉はわかりますよ。それに近いやり方でオペラを書いている人もいるけれど、それは三善さんが望んだことじゃないはずなんですね。といって、三善さんは言葉を無視したんじゃなくて、言葉に十二分に触発されて書いているわけですよね。

三善さん自身が言葉について言っていることがあるんですね。言葉ってものは音楽を呼び出すもの、喚起するものだけど、それが音楽になったら音楽を聴いてくれればいいんだ、という意味合いのことをかなりハッキリ言ってますね。ここから先は私の考えになるけれど、言葉のいちばん大切な要素を音楽にした。だから音楽を聴いてくれ、ということだろうと思いますよ。

理事長 詩人であり、俳人であり、歌人である高橋先生は、言葉を非常に選ばれて大事にする方ですね。高橋先生の磨きのかかった珠玉のような言葉と、三善先生の音楽的な成果に恵まれてできあがったオペラだったと思っています。

遠山 三善さんが自分で選ばれた作家ですからね。三善さんも、そこを大切にされたはずなんですね。

 

世界に発信するということ、作品が成長するということ

理事長 関係者の皆さん、市民の皆さんから、仙台の財産として大事にしていきたい、大事にしていってほしいという要望をたくさんお聞きしています。これから先、どのようにして行けばいいとお考えでしょうか。

遠山 演奏家にしても、演出家にしても、いろいろな形でやってみていただきたいなという気がしますね。なんといっても、音楽の生殺与奪の権をもっているのは演奏家なんです。だから、いろんな演奏家の心の中で、このオペラがどういうふうに成長していくかということが、私には興味があり、関心がありますね。

 

 

 

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