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2・転落者の救命対策

転落者が出た場合、救助には次の事項が重要となります。

1] 救命胴衣を常時着用する

救命胴衣の着用は、捜索活動の際、転落者を発見しやすく早期の救助が期待できる極めて有効な手段です。不幸にして亡くなられたとしても、遺体の収容に繋がります。

2] 浮輪を用意しておく

転落事故の際は、素早く浮輪を投げ入れ、転落者がこれを掴むことができれば、気分が落ち着き、パニックに陥りにくく、流されたとしても早期の救助が期待できます。

3] 縄ばしごを用意しておく

転落者が自力で船に上がるのは難しく、また、転落者が弱ってくると船上から転落者を収容することが難しくなる場合があります。縄ばしごの類いがあれば、こうした際に有効と考えられます。

4] 携帯電話を携行する

平成12年5月、海上保安庁に緊急ダイヤル「118」番が開設されました。事故の発生を速やかに通報すれば、それだけ早い救助活動が期待できます。

(118番通報のうち9割以上がいたずら電話だそうです。心すべき問題です。)

以上のことから、救助成功の鍵として、次の2点を掲げておきます。

・早期発見、早期救助

・救命胴衣の常時着用

2 事故防止のための心構え

事故は何故無くならないのか、これは永遠のテーマです。事故防止のためには、事故を起こすまいとする強い意志と、事故防止に対する具体的な取り組みが大切となります。

(1) 事故に対する意識の問題

意識して事故を起こす人はいません。故意に起こせば犯罪です。そして、殆どの人が事故は自分に無縁であると思っています。このため、実際に事故に遭遇しかけたとき、咄嵯の判断が間違ったり、遅れたりすることがあります。幸いに事故を回避できたときは別に問題は無いのですが、事故に繋がると、その時に限ってとか、あのときにああすれば良かったと、後になって悔やむことになります。

事故防止の最大のポイントは事故に対する意識の改革です。そのため、事故の態様や原因を研究しておくことは、決して無駄ではありません。

(2) 事故防止への取り組み

1・海の特殊性に対する認識

ここでは陸上との比較から海の特殊性を探ります。

1) 海難事故

山岳部での事故は別として、市民生活が営まれている陸上での事故と海難事故との決定的な違いは、救助活動が開始される時期にあります。陸上では、警察・消防署・救急病院が各地にあり、パトロールカー・消防車・救急車が比較的早い段階で現場に到着するのに対し、海上では救助船の基地が限られており、かつ、救助船の速力にも限界があるため、救助船の現場到着に時間を要します。陸上の事故と比較して海難事故は、救助活動の開始時期に差が出るため、危険状態が長引くといえます。

負傷者・死亡者の収容についても、陸上では比較的短時間で終了するのに対し、海上では行方不明者がでるケースが多く、捜索に日数を要することになります。

海に関わる人は、今後とも、海難事故がもたらす重大な結果をよく認識し、行動することが必要です。

2) 補給

陸上では、車が燃料ぎれになりかけた場合、各所にガソリンスタンドがあるので、滑り込みセーフが期待できます。洋上には補給基地がありません。燃料ぎれは即漂流を意味します。食料ぎれは飢えを意味します。事前準備が重要視される所以です。準備不足は海難に結び付く恐れがあります。

2・事故防止のための具体策

自船の安全確認のため、出港前・航海中を問わず多角的に情報収集をする必要があります、これらの情報の有効活用とルールのそった行動が、安全運航の要件となります。

1) 情報収集

洋上に出て事故に遭遇し、118番に通報する際、現場の位置を間違って通報すると速やかな救助活動に支障を来します。行動の範囲内の物標は事前にチェックしておきたいものです。情報収集は船舶の安全に直接影響を及ぼします。

 

 

 

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