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これは沿岸から2海里沖合で、小型船同士が横切り関係から互いに気づかないまま接近し衝突した事例です。発生時間はこれも薄暮れどきでした。沖合から見る他船の灯火は、陸岸部の密集した明かりに紛れて見ずらくなります。

この衝突は、双方の見張り不十分が原因です。その背景には、周辺海域のことがよく分かり、通常のコースであるという慣れがあります。

結果として

・安直な気持ちに陥りやすく、気の緩みが生じる。

・薄暮れどきは見え難くなる魔の時間帯であると承知していても、安易な気持ちがつい認識を甘くしてしまう。

小型船舶が留意すべき事項として、次の点を挙げておきます。

1] 藩薄暮れどきや船舶が輻輳する危険海域について認識を新たにする

事故に無関係でいると、危険の概念が欠落しがちです。気持ちを引き締める必要があります。

2] 危険海域では、高速船はスピードを落とす

近年の小型船舶は性能が向上し、30ノット以上のスピードが容易に出るようになりました。高速航行に移ると船首が上がり視界を妨げます、危険海域では、極力スピードを落とすことが大切です。

3] 危険海域は、できるだけ明るいうちに通過する

遊漁の場合は、とかくアルコールが入りがちですし、興に乗って時間を忘れることもあります。引き揚げのタイミングが誤ることなく、日のあるうちに帰港したいものです。

業務の都合で通過する場合でも、出発時間や作業時間を調整して、安全な時間帯を選んで航行することも可能です。

以上二つの事例から、衝突予防の要諦として、次の3点を掲げておきます。

・早期に発見

・躊躇なく回避

・そして安全運航

(2) 海中転落

この種の事故は毎年各地で発生しており、海中転落がそのまま死亡・行方不明につながる率は、極めて高いものがあります。

実際のところ、波間で浮きつ沈みつしている場合は、一度見失うと、発見は容易でありません。

転落防止の措置と転落者の救命対策に分けて考えてみます。

1・転落防止の措置

ここでは、小型船舶特有の事故を取り上げてみます。

次のようなケースがあります。

事例 1) 揚網などの作業中、船体が傾斜して転落

一人乗りの場合、この種の事故が発生し易い。帰港予定時間が過ぎてから変事に気づくため救助活動が遅れる。生存の可能性は極めて低い。

2) 漂泊中、横波を受け、動揺して転落

直ちに収容できれば問題はない。ただし、転落者を助けようとして別な人が海に飛び込む場合、本人の救助能力がしっかりしていないと二重遭難につながる恐れが多分にある。潮によって転落者が流されるときは特に危険。

平成12年7月明石海峡で発生した海中連絡は、海に落ちた子どもを助けるため、親が飛び込みましたが結局救助できず、親子ともども海の犠牲となった痛ましい事故でした。

3) 航走中の船体への衝撃や転舵中の船体の傾斜により転落

この場合は、転落にすぐ気づいても、反転して転落場所に戻るのに時間を要し、その間転落者は流されるので、一度見失うと発見し難くなる。

以上のように、小型船舶は動揺しやすく傾斜しやすいために、乗船者がバランスを崩して転落するケースが多発しております。

しかし、転落事故を防止するための手段としては、なかなか決め手がないのが実情です。

事故防止のため考えられる方法を挙げてみます。

1] 高速航行や急激な転舵は、できるだけしない。

2] 子供が乗船しているときは、特に安全運航に心掛ける。

3] 一人乗りは極力避ける

4] 足場を整理整頓しておく

5] 甲板に滑り止めを塗布する

6] 乗船者は安全靴を履く

 

 

 

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