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2] ブレーキ

船にはブレーキがありません。前進を完全に停止させるためにプロペラの逆転を使いますが、これはブレーキではありません。全速で航行中には使えないからです。機関停止後でも、プロペラは水流を受けて回転しています。ここで無理やり逆転をすれば、プロペラ軸にねじれ現象を起こし、最悪の場合はプロペラ軸が破損します。プロペラを逆転する操作によるブレーキは、速力が十分に落ちた後でなければ使えないのです。

大型船が港に入ろうとする時、かなり前から徐々にエンジンの回転数を下げて行き、停止地点でスクリュウの逆転ができる速度になるように予めエンジンの停止を行います。その後、舵の効果を失わない程度の速度を維持しつつ停止地点に近づいて、停止地点でプロペラを逆転することで停船させるのです。

 

3] サイズ

大型船に対する小型船舶の存在は、道路での大型トラックに対するバイクや自転車・歩行者の存在であると言えますが、感覚にはそれ以上の差があります。速度の遅い小型船舶が歩行者や自転車、プレジャーボートやモーターボートがバイク、小型内航船が普通自動車、大型船舶がトラックと言ったところでしょうか。小型船舶を操縦していて、一般の船に近づいた時には、車を運転しているときの歩行者やバイクに対する感覚以上の差があると考えて、不安を与えないような行動をしてください。

長さ300mクラスのタンカーが毎日のように、満載して瀬戸内海に入ってきています。海上交通での特徴として、このような超大型船の存在があります。通行許可の必要な超大型トレーラーのようなもので、狭水道や航路通過に際して、届け出なければなりません。幅も60m近くあり、小型内航船が横向きに積むことの出来る大きさです。

超大型船は、走り出したら急停止も急ハンドルも効きません。要するに、止まれない、曲がれない船なのです。さらに、浚渫済の航路筋より離れることができません。危険な状況になっても、逃げることができないのです。運良く停止できたとしても、次に風潮流の影響を受けて航路筋から出てしまい座礁する可能性があります。

さらに、ほとんどの超大型船の船橋は、船尾にあることから、前面の死角が大きく、直前の障害物を確認することは困難です。超大型船を操船していて、小型船舶が直前を横切ると反対舷に見えるまで頭の中に不安と緊張が走ります。もし、衝突すれば、小型船舶にとって結果は悲惨なものとなります。超大型船の近くを走るとき、船橋が見えなければ、相手からは見てもらっていないと判断するべきです。

以下(潮汐、位置確認、事故発生の人的要因、終わり。)次号に続きますのでご期待ください。

 

 

 

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