これを推薦航路と言います。また、交通量の多い海峡や港の防波堤入口付近等では、一定の大きさ以上船は航路幅の決められた航路内を航行することを強制しています。このような航路には、自然発生的な航路・経路を示した推薦航路・法律による航路の3種類あります。航路を利用するにしても、横断するにしてもそれぞれに対応した約束を守る必要があります。
道路で衝突事故の多いところは交差点です。信号機や優先道路を決める事が制御しています。航路にも交差点はあります。海の交通ルールは海上衝突予防法が基本ですが、法律による航路では、航路航行船が優先されます。すなわち優先航路になるのです。操縦性能の悪い船が優先されるルールになっているところもあります。道路のような一旦停止の標識はありませんので、法律で規定された航路を常に頭に入れていかなければなりません。始めての海域を航行する場合には、必ず航路を事前調査して知っておく必要があります。
3 自動車と船
次に、自動車と船を比べてみましょう。2つの大きな違いがあります。一つは操縦性能の違いです。極端なものとしては、内輪差とキックの違いです。さらに、船にはブレーキがありません。全速で航行中の船では急停止することができません。もう一つは、大きさの違いです。小型船舶から大型タンカーまで、寸法・重さに極端な違いがあります。バイクや普通車と大型トラックの比較とは程度が違います。この大きさの違いによって、操縦性能も極端に異なります。ここでは、自動車と船との違いから来る運転感覚の違いを説明します。小型船舶の操縦者の皆様には、大きな船の特徴を知っていただきたいです。
1] ハンドルを切る
曲がろうとしてハンドルを回すと、自動車は前輪が方向を変えて後輪がついてきて、後輪は前輪より内側を回ります。(内輪差)それに対して、船は、船尾を逆方向に押し出していき、船首を回転方向に向けるのです。すなわち、船尾が外にはみ出します。(キック)
直前に障害物を発見しました。自動車の場合は、ブレーキが間に合わないと判断すればハンドル操作で逃げても接触はしません。船の場合は、片方にハンドルを切ったままでは、船尾が接触します。自動車でハンドルを切りながらバックする際に前の外側に注意しなければならないのと同じ事です。そこで、直ちに舵を逆転してキックをうまく使います。
船にとって、舵を使う際の問題がもう一つあります。舵がある程度の水流を受けていなければ回頭することが出来ないことです。低速で運転性能を要求されるタグなどの船舶には、船外機のように水中でプロペラの回転軸自体を回転させる構造のものがあります。しかし、構造及び効率の点から大型船用は開発されていません。すなわち、低速で方向を変えることは難しいのです。これは、大きな船ほど難しくなってきます。徐行をしている大型船は、向きを変えるのが非常に難しいのです。