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ウ. ライン内立入りの制限または立入り時の条件設定の厳格化

エ. 通路等の段差の是正、階段の滑り止め

オ. 高速設備・機器の使用制限などが検討されます。

 

3] 視力聴力の加齢による機能低下は訓練によって防ぐことは難しい。

視力聴力の低下は40代より自覚されるようです。視力では近場が見えにくいといった距離的な視力の低下のみならず濃淡の区別・明暗変化への順応力等の低下もおこります。事例No.27「ブラスト作業中の転落」ではマスクの着用で視野が狭められていたことにも留意いただきたいですし、事例No.28「ホールドを間違って入り墜落」では、暗がりの中で本人は周囲の状況を把握できぬうちに墜落しています。個人のトレーニングだけでは機能維持が困難な分、施設設備面での対策が望まれます。

具体的な対策としては

ア. 表示・警告板等の拡大、コントラストの増大、色分けの明確化等

イ. 通路や作業床の極端な明暗差をなくすよう照明に配慮

などが検討される必要があります。

鉄工、船体、配管の職種に聴力の低下を訴えるものが多いという統計が全船安でもまとめられています。医学的にも、「まわりに騒音がある場合、特定の音が聞き取りにくい」「周波数の高い音が聞こえにくくなる」事が分かっています。現場で騒音そのものをシャットアウトすることは出来ませんので、耳栓使用の徹底をはかるとともに、対策は以下の通り検討されます。

ア. 音声に頼らず、合図燈、文字・指示カード、旗、ジェスチャー等を活用

イ. 作業指示を復唱させるなど確認

事例No.22「雨天の高所作業中、バランスを崩して梯子より墜落」では雨具の使用などにより、視覚聴覚の制約がかかった例です。艤装岸壁など屋外の作業現場では、気象の変化により作業環境が変化することを前提として危険予知を行なうなど怠り無く対策を検討するべきです。

 

4] 近道行為をした

事例にも多くある近道行為、事例No.3「下船時の近道行為で海へ墜落」事例No.12「隣のローリングタワーに乗り移ろうとして墜落」事例No.16「作業を先行させようとしてロンジを昇り墜落」など当人が自ら不安全行動を行ない被災する例などが報告されています。状況の把握が甘くなってしまうのか、未確認のまま、手抜き行為に走るベテランが被災する例がなくなりません。これらの発生は管理・監督者側にも問題があることを示唆しており、現場状況を確認した上での具体的な作業指示、安全指示の徹底が望まれます。

 

5] ひとりでやれると過信した

事例No.15「足場板を1人で掛けようとして飛び降り」事例No.26「ホースの投げ渡しで海へ墜落」などは、加齢により動作の切り替えや運動がスムースに出来なくなったので受傷したとも言えなくありませんが、それ以前に作業基準からの逸脱があり、たまたまこれまで災害に繋がらなかったというだけのことです。全ての事例が安全帯の未使用中に起っていますが、事例No.7「吊り足場の固定箇所が外れ墜落」事例No.11「甲板からローリングタワーごと墜落」事例No.13「ターンバックル操作中、墜落」のようにもともと安全帯をとめるための親綱が設置されていない状況下で、危険を意識せぬまま作業にかかり被災した例もあり、不安全行為の背後に不安全状態の放置があった点が指摘されます。

 

 

 

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