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熟練者がケガをする理由としては、

 

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熟練者であれば、作業をうまく、速く、疲れずに安全にやれる能力は普通の作業者より高いことがわかっています。しかし、作業の個々の手順が無意識的、自動的に連続動作として進行してしまうので、例えば、機械に日頃と違う異常があっても見逃してしまうことがあるようです。慣れすぎによるエラーが起こり得ることも認識しておく必要があります。

 

(3) 墜落・転落災害の原因と対策

本書をまとめるにあたり、平成元年以降の当連合会に報告された墜落・転落災害の見直しを行ないました。特徴のある個別の災害事例の紹介と分析は次の「3.中高齢者の災害事例」に譲るとして、ここでは墜落・転落災害全体の傾向と対策を検討します。

 

1] 身体機能の加齢による低下のうち、筋力の低下が直接原因となって墜落・転落事故が発生したと断定できる事例は無い。

しかしながら、若年層に比べ、いざ被災した際の身体へ受けるダメージの大きさに差異が生ずることは明らかです。また、筋力の低下で“運搬がきつい”“手持ち道具・器具が重い”“中腰姿勢の作業がつらい”“垂直梯子の昇降に不安を感じる”等を自覚する中高齢者は多く、間接的に不安全行動の誘引の要素となっています。筋力は心肺機能同様、もともと個人差が大きく、体力測定により各自が自分の能力を把握されることが望ましく、日頃のトレーニングによって能力の維持が期待できます。

 

2] 平衡感覚・柔軟性・敏捷性が低下してくると、不安全行動・不安全状態があったとき、身体を支えきれず受傷に至る。

事例No.4「渠側階段で足を滑らせ転落」事例No.5「吊り足場を移動中、墜落」事例No.18「ブルーワークから墜落」事例No.21「トラックの荷台からバランスを崩して墜落」等がこの典型です。筋力同様日常的な体操などで機能維持を図ることはある程度期待できますが、むしろこれらの災害事例は、不安全状態が放置されていたことや、本人が不安全行動を取ったことが災害の原因です。己を過信せず充分な備えが必要です。

具体的な対策としては

ア. 墜落・転落防止柵の設置、安全帯使用の徹底

イ. 狭い足場・作業床上の作業の制限あるいは墜落・転落防止策の徹底

 

 

 

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