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6] 過去の経験からやれると判断

事例N0.1「乱雑に積重ねられた鉄板上での切断で墜落」事例No.17「積み荷の上に乗ったところ荷崩れし飛び降り」等でありますが、長年の経験が逆に災害を招いた例です。作業基準遵守より習慣動作がつい出てしまうというのは、中高齢者にありがちな傾向です。事例No.2「フォークリフトの爪が引っかかり足場が傾斜し、飛び降り」事例No.8「手やすロープで解体物を降ろしていた際、よりがもどって手に当たり墜落」事例No.23「足場板を支えるチェーンが外れ墜落」等は、ベテラン同士なのだからと、作業基準が曖昧なままグループで作業に掛かり災害となったもので、本人のみならず共同作業者との充分な打合せが必要であることをあらためて実感させます。事例No.25「清掃作業の勝手な予定変更による墜落」は経験年数の少ない中高齢者の被災の例です。造船業に長く従事していても経験のない職種では初心者の注意が必要でしょうし、同一職種に従事するベテランでも、職場ごとに作業基準や注意事項が異なるはずですので、事前の充分な打合せが必要ですし、年齢にとらわれぬ職場のコミュニケーションづくりが大切です。事例No.30「海上試運転で無理な飛び降り」は、職種の経験の長短と個別の作業の慣れ不慣れは別である、という事実が背景にあります。この例は「専門家の専門知らず」というほど深刻な事例ではありませんが、周囲の「彼なら大丈夫」という誤解と本人の早合点・未確認が重なることは、よくありがちなことです。

1]から6]まで墜落・転落災害の原因と対策を述べました。

1]から3]までは身体機能の加齢による低下によるもので、4]から6]までが、作業行動の誤りに由来するものです。1]から3]については個別に対策を述べました。4]から6]についての対策は

ア. 現場状況を確認した上での、具体的な作業指示、安全指示

イ. 安全帯の使用を徹底させるための、親綱の展張の不備。(墜落災害では、安全帯の未使用が大半を占めているが、「安全帯を使用せよ」との言葉だけではなく、どのような方法で意識付けを行い徹底させるかが課題である)

ウ. 作業手順書(作業基準)による教育の不足。(部下への教育とその浸透度を日常の現場巡視の際確認し、徹底するための方策を考え実行する努力が必要である)

中・高齢者の心身機能の低下を理解し、部下にもその点を良く認識させるとともに、職場環境、作業方法の改善を進めていく必要があります。そのためには、災害が発生した時点で、「人」「設備−物」「作業」「管理」(災害要因分析)面について、次の災害要因分析図等を参考に分析を行い管理体制の見直しと管理・監督者の安全に対する意識の改革を図ることが重要です。

 

 

 

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