これらの作業は一時的・瞬発的でなく、作業に従事している時間内を通じて平均的に発揮できることが要求されます。また、一般に作業は持てる能力のすべてを発揮して行うのではなく、かなりの余裕を残すことにより安全で正確な作業を行うものです。
「加齢」と「心身機能」の関係を作業と関連させて考えると、およそ次の5原則があてはまります。
ア. 生理的機能(特に感覚機能や平衡機能)は、早い時期から低下が始まる。
イ. 筋力の低下は脚力に始まり、体の上方へ向かい手の指先へと進む。
ウ. 訓練によって得た能力(知識・技能)は長期間使用するほど維持できる。
エ. 経験と技能の蓄積は、熟練を構成し、より高度で複合的な作業能力を生む。
オ. 中高年期以降は、心身機能の個人差が拡大する。
しかし、現実に作業が行われている場面では、上記の原則等を常に自覚できるものでもありません。特に、とっさの場合には自分のピーク時代の心身機能が脳裏をかすめ、これが結果的には過信となって無理な行動につながりやすいのです。
高齢労働者の災害の背景には、こうしたことが潜んでいる可能性を十分に考慮しておくことが必要です。
(2) 中高齢者の長所と適正
ア. 出勤率が高く、遅刻が少ない。
イ. 判断力があり、意欲が高い。
ウ. 義理堅く、常識が豊かである。
エ. 勤務態度がまじめで責任感に富み、仕事に真剣に取り組む。
オ. 持久力があり、辛抱強く、単純作業に従事しても飽きない。
カ. 仕事が丁寧で、むらが無く手順も良いので仕事も遅くない。
キ. 定着率が高い。
ク. 礼儀正しく職場の規律を守り、集団行動の場合でも協調性に富む。
ケ. 仕事の経験が豊富で段取りがうまく、注意力があり熟練技能を生かせる。
コ. 精神的にも安定しており、落ち着いている。
サ. 物と時間を大切にする。
シ. 仕事や人間関係に豊富な知識や経験を生かすことができ、未熟練者や若年層の相談相手になれる。
ス. 不平や不満、わがままが少ない。
セ. 創意工夫をすることが上手である。
しかし、長所と適正があったからといって、ケガをしないとは限りません。