日本財団 図書館


第4に、米国でPBOs改革がなかなか進まないことの意味である。その意味は、エージェンシー化をはじめとするNPM改革や、政府と市民の関係を重視するガバナンス改革等のグローバルな潮流が、米国での経験によって限界にぶつかった、というよりはむしろ、政府改革自体はグローバルな潮流のなかにあるが、各国の改革にはそれぞれの国の特徴やスタイルが現れる、ということではないかと思われる。政府改革の国際化あるいは収斂化には懐疑的であったロバーツも、米国連邦政府の改革が、州や自治体における改革の影響よりも、他の先進諸国の改革からより大きな影響を受けていると述べている43)。ロバーツ同様にエージェンシー化の多様性を主張するO・ジェームスは、表6のように、コーポレートガバナンスの視点からエージェンシーモデルを整理するが、エージェンシー化という基本的な改革方向は認めている44)。コーポレートガバナンスについても、「日本型コーポレートガバナンス」を主張する研究があり45)、収斂というよりも多様性が見られる。

またD・ケトルは、表7のように、諸国の公共管理改革(public management reform)を、急進的なウェストミンスター型、漸進的な米国型、中間的な北欧型、の3つに分けていた46)。NPM改革に対する諸国の態度は、通常、積極指向型、消極型、非指向型の3つ程度に分けられるが、これらのタイプをカバーする10か国における公共管理改革を比較分析した研究は、政治システム、行政システム、市場経済システムの関係が、これらのタイプによって異なることを示唆しているのである47)

 

表6 中央政府におけるエージェンシーモデルの出現、エージェンシーモデルに似た形態である私的部門コーポレートガバナンスの伝統的利用とその出現

134-1.gif

(出典) Oliver James, "Varieties of New Public Management: 'Business-like' Government Agencies-Like What Model of Business," paper presented for the American Political Science Association Annual Conference, Atlanta, Georgia, 2-5 September 1999, p.18, Table 3.

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION