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5.2.5 簡易係留方式における計算結果

(1) 計算対象とした新係留方式

先に述べたように、離脱が容易でかつ簡易な新係留方式として陸側からリンク係留する方法の可能性が見出された。リンク方式をべ一スとした新係留方式について、さらに詳細な検討を行った。浮体は表5.8の3ケースのうちCase2(コンクリート比重γ=1.5t/m3)の場合について検討した。自然外力条件は表5.9に示す想定条件において、最も重要である波についてのみ考慮し、計算には周波数応答解析法を用いた。不規則波のスペクトルはBretschneider-光易型を用い、水深は10mを代表として選んだ。

図5.11に示すリンク方式をべ一スとした係留方式について検討した。リンク係留方式は、リンクの両端ではモーメントを伝達しない形式としている。浮体側リンク取付点が左右舷にあるため、Rollをかなり拘束してしまい、係留力が過大となる場合があることが分かっている。そこで、最終的に以下の2案を候補とした。

1) リンク・ばね係留方式

リンクがRollを拘束しないように、浮体側リンク取付点を浮体中心点付近のみにする。Yaw方向の位置保持のために左右舷に比較的弱いばねを係留系として設ける。

2) ヨーク・ばね係留方式

リンク・ばね係留方式のような2本のリンクでなく、一体化したヨーク方式でこれを構成することにより、より簡単で合理的な係留システムとなる。ヨーク係留は浮体式石油生産システムの一点係留システムに使われている方式である。

(2) 係留計算結果

1) リンク・ばね係留方式

リンク・ばね係留方式の計算結果を図5.12〜5.15に示す。係留による拘束条件は次のように仮定した。

・リンク

軸方向剛性;k=1000MN/m、10MN/m、1MN/m (3ケース)

回転方向;自由

・係留ばね

軸方向剛性;k=100kN/m、

図5.12、5.13に規則波中及び不規則波中のリンク軸方向係留力の変動応答振幅を示す。リンク軸剛性が弱い場合の方が係留力が大きくなる。リンク軸剛性が最も大きい(k=1000MN/m)の場合は、図5.14、5.15から分かるように、特異な運動も発生していない。そのため、本方式は合理的な係留方式になっていると言える。

2) ヨーク・ばね係留方式

ヨーク・ばね係留方式の不規則波中の計算結果を図5.16、5.17に示す。ヨークは剛体と考え、取付点の回転は自由とした。係留ばね特性は以下のように2ケースを設定した。

・ヨーク

軸方向剛性;k=1000MN/m、

回転方向;自由

・係留ばね

軸方向剛性;k=100kN/m、1MN/m (2ケース)

 

 

 

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