日本財団 図書館


あまり格好のいい話ではなしに、今日名簿を見ましたら、関東の方が多いんで、とりあえず空中写真を持ってきました。山から川を経由して海に行く。つまり冒頭の寺島常務の話のとおり、水を経由しての事柄についてのお話をします。

最初に、写真33は江ノ島です。ご存じのとおり江ノ島の中央には神社があり、東側にはマリーナがあります。神社へ行く間には露天商も出ていて、そこでお団子を食べて多くの皆さんは帰ってしまうのです。でも、もう少し地学というか、地球の動きを見てみると、神社を越えるのに30分ぐらいかかるんですが、もう少し越えていただく、あるいは迂回していただくと、江ノ島の先に出られます。そこは、大正12年の関東大地震によって隆起した岩があります。島の先端部に白っぽい部分が見えていますね。白っぽいというのは波が砕けているので、そこは岩礁が隆起したことを表わしています。是非、そこまで出かけてください。そういう所へ行くと、子供たちに興味のありそうなものがたくさんあります。例えば穿孔貝といって、岩をほじくる貝とか、とにかくいろいろな生物がたくさんいます。その生物の種について質問されても僕は分りません。でもそうではなくて、色々見る所はたくさんあって、写真34をご覧ください。波が寄せていますが、このように波がたゆまず作用することによって、大きな穴、洞窟を掘っています。その洞窟が島の裏側に行くとあります。潮が低いときに行くと見られます。

我々人類も海から来ているわけでしょう。山から来たという人があったら手を挙げてください。ほんとうに生物というのは海から来ているわけだから、そういう意味でいくと、自分の原点の姿(ルーツ)が、どこかに感じられるところがあるのです。地震がたびたび起こってきましたが、それは遠い昔のことではなくてついこの間です。大正12年(今から78年前)ですから。でも、この地域で大体1mぐらい地盤が上がったのです。これが房総半島の先ですと1.5mぐらい。房総〜小田原あたりまでが、2〜3分間ぐらいでぐっと上がる。それだけ子供に説明してあげても、地震というのはやっぱりすごいなというのが実感として得られると思うのです。だから、そういう意味で、ぜひお団子だけ食べて、風車などを買って帰るのでは、ほんとうはもったいない。

話を戻しましょう。海辺に行くと砂浜があります。「知っているよ」と言うかもしれませんが一言で言えば、「砂は生きている」のです。人と同じように生きている。生きた砂の状態を保たない限り、結局は人間の方へ戻ってきます。どうしてか。陸と海の境界はどこか? ある時はよく見られる普通の汀線でしょう。しかし、例えば津波や大きな波が来れば汀線はもっと内陸に来ます。それから、今、皆さんが車にさんざん乗って、CO2がどんどん増えているため、海面が年間1cmぐらい上がっていると言われている。さきほど人間の寿命のことを言いましたけれども、数千年の昔は、(写真33・34)に示す範囲は全部陸ですよ。大体、当時の海岸線は今の水深40m付近にありましたから、はるかに土地は広かった。それから、今から五、六千年の昔になると、この辺は全部、海の底でありました。だから、そういうふうにしてみると、絶対なるものは何もない。ただただ相対的なものなのです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION