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そういう長い歴史の中で、また毎日の潮の干満で、日本中1m程度海面は変わっています。上がったり下がったりしている。それから、波も当然来ます。波というのは、ばちゃんばちゃんと来ている、ただそれだけよというかもしれませんが、チリ津波というのはご存じですか。あれは昭和35年だったかな。チリから出て、日本に到達するのに12時間という話です。これを逆算しますと、ちょうどジャンボジェット−−時速1000kmぐらいです。−−のスピードで伝わってくる。ここら辺に来ている波も、実は相模湾で発生したものだけが寄せて来るわけではなくて、太平洋のほうから寄せて来るのです。そういう波の作用を受けながら(写真33・34)のように江ノ島の東西には安定な砂浜があるのです。

で、砂浜をよく観察しようと、子供を砂浜に連れて行ってみましょう。穴を掘ってみる。すると水が沸いてくる。やってみましょうよ。そういうのをただ見るだけじゃだめなんで、みんなでやってみると、その中から虫が出てきたり、水が湧いてきたりする。それが浄化と大いに関係しています。人は、飲み水をどうやって飲んでいますか?山のほうの水を砂層を通して浄化する。それと同じことを、はるかに昔から自然はやってきているのです。ちょっとまねして、お金をかけただけです。そういうのが、海浜でたくさん行われているわけです。そうやって水の浄化が行われて、しかも、白いのは白波が立っていることを示しますが、海の水というのはなかなか混ざりません。海水中に酸素を混ぜ込めようと思えば、棒でかき回せばいいですけれども、なかなかそうはいかない。岸近く寄ってきて波が砕ける、そうするとその辺は非常に攪乱が強くなっている。かき回している。そういうもので酸素が中に入っていく。だから、こういう風景というのは、白砂青松と言うけれども、あまり白くないかもしれませんが、非常に重要なのです。

ところが、そこはまた人間が住みやすい場所なものですから、人様は−−ちょっと、私は、今日は、人間じゃなくて、砂の気持ちに変えてしまいますので、「人は」と呼びますけれども、人は、海に出て来たがる。波は普段は来ないものですから、そこは空いていると勘ちがいする。その土地はムダであると。だから、おれのほうへよこせと。そうやって人と自然(海)が綱引きをやって、一見すると人間が勝ったように思える。しかし、非常に長期的に見ると、必ず自然のほうが強いわけですよ。だって、200万年の歴史と何億年という歴史じゃ、全然違うでしょう。そういうところに対する基本的な理解を持っていただきたい。

観察というのは、私があまり言ってもしょうがないかも知れませんが、おもしろいかどうかですよね。肝心なことは。海辺へ行っても、別におもしろくないという人もいるわけです。ですけど、そういうのは、わりと小さいときから、何を見たらいいかということをある程度言ってあげないとわからないので、そういう機会があれば、海辺へ連れていってもらうと理解が進むのではないでしょうか。

 

 

 

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