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それで地域というのは、わずか数十年の間に、あっと言う間に変わっちゃったんだということがわかってきました。そうしたら、(写真30)ぜひ昔の写真をみんなに見せたいとか、共有しようということで、それぞれのお蔵とかアルバムから、古い写真をどんどん提供してくれる人が出てきました。昔、漁村が盛んだったときには、こんなに漁村に、わあわあと水揚げのときに人がいましたと。女性も活躍していたし、大八車もあって、わあわあしていたんですね。そういった写真を集めていくうちに、地域というものが、(写真31)ほんとうに数十年前までには、今、おじいさん、おばあさんでいる人たちも、こうやって薪を背負って、丸木橋みたいなものを渡っていたりとか、そういう具体的なところの話が出てきたわけです。それで、(写真32)同じ川に架かる橋も、だんだん立派になっていったよとか、こういった古い写真が出てきまして、それをもって、一つ一つの地域の場所を復元していくということを始めました。

私が紹介したのは2つの地域の例なんですけれども、これからのフィールド調査というのも大事だと思うんですけれども、それだけではなくて、やっぱり地域がどういうヒストリーを持ってきたかということを、具体的にみんなと共有していくということも重要ではないかなと思うんです。そういったときに、教材づくりに地域の人も参加してもらうことが重要じゃないかと思います。それは、ほんとうにアイデア一つで、さっきみたいな地域の何げない風景写真をお家から持ってきてもらって、同じ場所に今行ってみるとかするだけで、ほんとうに数十年で地域が変わってきた、特に海とか川というところは、ほんとうに跡形もなく変わっているところもたくさんありますから、そういうことがわかるはずなんですね。

私自身は生物の研究をしていて、生物そのものが好きです。だから、いろいろなところに行って、生物の説明をしたりとか、子供さんたちと観察をしたこともたくさんあります。その中で、やっぱり専門家として気をつけなければけいないなと思うのは、自分は楽しくても、それにあまり興味がない子も、どうしてもいるということを忘れがちになるんです。そういったときに、総合でウィングを広げておくと、どこかに何か引っかかってくる。だから、そういった生き物はあまり興味はないけれども、橋は興味があるとか、車は興味があるとか、そういうお子さんがいたときに、環境復元をみんなでしていくと、それぞれの興味に合うような場所というのが、どこかから出てきます。

そして、学校が一種の地域の環境の復元のセンターになるということもできると思うんです。だから、写真とか、いろいろな資料を持っているし、お話もしたいけれども、どこに行っていいかわからない人たちが地域にはたくさんいます。そういう人たちを、ぜひ求心力を持って集めていただくというのが、今後の学校の1つの役割になるのかなと思っております。

それでは、雑ぱくな話でしたが、以上です。(拍手)

 

 

 

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