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それで、山は、こんなに木が流れてくるのは、どうしたことだろうと思ったら、実は林業というのも、とても省力化が進んでいるということがあって、昔の手で切っていたり、雪道を滑らせていたりとかのローテク時代と違って、ハイテクになったら、どんどん山を傷めるような木の切り方になってしまったことがわかったんですね。そうすると、傷んだ山から木が崩落してくるだとか、それから間伐材の処理もきちんとしてなかったんで、間伐材が人手がないからということで、その辺に放ってあったので、どっと沢を落ちてきたことがわかりました。木が流されてくる理由がわかって、(写真26)何と沢が「土木石流」と言えるほど、土石流だけでなくて、土や石と一緒に木が流れ下ったらしいということがわかって、こういったふうに沢が削れていることがわかりました。

これは最終的には小学校まで輪が広がっていったんですけれども、自分たちが見たことを、(写真27)こういう洪水の記録というのを写真集をつくろうということになりまして、地域の市民フォーラムの人たちが中心になって、こういう台風調査委員会というのをつくって、川や海で何が起きているのかというので、写真を集めてみようということになったわけです。

こういった大人たちの活動というのが、(写真28)徐々に横で見ている子供たちに伝わったり、小学校の教材になっていったりしたんですけれども、例えばさっきみたいな自分たちの川はどうだったんだろうと考えてみたら、これは60年代ぐらいまでは、川がぐねぐねと蛇行していたということがわかりました。今、この活動をしている40〜50代の方たち、教育委員会の方もおられますし、学校の先生もおられます。そういう人たちが川で遊んだという記憶があるときには、川はもっと曲がっていたよね、ということなんですね。空中写真を調べてみたら、やっぱり曲がっていたんです。ところが、今の川は真っ直ぐになってしまっているけれども、どうしてだろうということになって(写真29)、現地に行ってみると、何となく曲がっているから、スケールがわからないんですけれども、こんなに曲がっていたところはショートカットして、こんなに真っ直ぐになっていたということがわかりました。この写真を見て、地元の先生が言っていたのは「学校で川を真っ直ぐにするということは石狩川でやっていますと教えていたけれども、何と、うちの川もやっていたんですね」ということなんですね。ですから、例えば私ぐらいの年の人だと、そうなっちゃった後の川しか知らないんで、昔の曲がった川が地域にあったことすら知らないんです。

 

 

 

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