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さて、21世紀になったわけでございますけれども、今後の生活を考えるときにも、この海・川・水というのは大変重要なものだと思います。最近は、川や海が汚れている。あるいは魚が海草や取れなくなった。あるいは魚などに重金属やダイオキシンなどが含まれていて、食べるのはどうかというようなお話もよく聞きます。さらに私などの経験から言いますと、小さいころよく見た水草やカニなどの小動物が住んでいた小川とか、水辺の環境などというものが非常に今は見ることが少なくなってきております。つい最近まで、少なくとも海は非常に大きなものであって、ちょっとやそっと魚を取っても、あるいは汚いものを流しても全然問題ないと。全部受け入れてくれると。こういうふうに思われてきたわけですけれども、さすがに20世紀後半、人類が大量生産・大量消費の時代になりますと、そういうふうにも言っていられなくなりました。とにかく海の汚染、資源の枯渇、生態系の破壊、そういったことがあっちこっちで問題になってきておるわけでございます。

そもそも環境というのは、なかなか悪化するということがわかりにくいものでございますけれども、環境悪化というのは、小さいところからどんどん顕在化してきております。最初は川や湖、あるいは磯とか浜辺、そういったところから起こったことが、だんだん大きなところへ行きまして、日本で言いますと有明海とか瀬戸内海、そういったところでいろいろなマイナスの異変が起きてきておるわけでございます。ちょっと目を向けますと、例えばカスピ海ですとか、あるいは北極海ですとか、さらには中緯度の海域とか、そういったところでも、いろいろなマイナスの現象が起きております。イルカの大量死などという問題も報じられておりますけれども、イルカというのは海の生態系の中の食物循環の中では非常に上位に位置するものでございまして、人間の下におるものでございます。海棲ほ乳類というものは小さな魚を食べているわけですが、その上に人間がおりますので、イルカで起こったことは、いずれ人間にも起こるということでございますので、目に見える形でも、あるいは目に見えない形でも、いろいろな異変が起きているということについて、私どもは考えなければいけないんではないかと思っております。

海の汚染と言いますけれども、実は海の汚染の原因の8割は陸上に起因していると報告されております。陸上で、工場排水ですとか、自動車の排ガスですとか、そういったことがありまして、さまざまな形で川を伝ったり、大気を伝ったりして、さまざまな形で、それが海に流れ込んで、いろいろな汚染の原因になっております。これも生産活動だけではなくて、私どもが生活している家庭用の排水、洗剤ですとか、あるいは自家用車の排ガスですとか、一人一人の生活の結果がたまりたまって、海にも影響を与えておるわけでございます。

それから最近、新聞などを見ますと、中国の黄河というのは大変大きな川だと思っておりましたが、その川の水が年200日以上も河口まで届かないという状況が起こっておるそうでございます。これは黄河に限らず、例えばアラル海の元になっております中央アジアの川などでも起こっておるんですが、上流域での雨不足と、それから途中での灌漑等による使い過ぎによって、水が河口まで届かないというのが世界各地で問題になっております。それから、届かないだけではなくて、地下水が汚染されているという問題も非常に出てきております。ですから、水の問題というのは、21世紀、人口がどんどん増える、あるいはいろいろと生産活動も盛んになって、そういう面での使用量も増えるということになりますと、21世紀、人類の最大問題の1つが水ではないかと思っております。

 

 

 

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