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昭和40年頃までの九十九里浜の漁業

近年まで漁港のなかった九十九里浜では、漁が終わると漁船は砂浜に引き上げられていた。しかし昭和に入り漁船にエンジンが搭載され大型化すると、砂浜での漁船の揚げ降ろしは大変過酷な重労働となった。こうした揚げ降ろしの際の貴重な労働力として活躍したのが「オッペシ」と呼ばれる女性たちで、真冬の早朝、極寒の中でも首まで海に浸かって出入漁の手助けをした。

このように漁港建設以前の九十九里浜の漁業は大変な重労働であり、漁港の建設はこの地域の住民の悲願でもあった。

(写真 小関与四郎氏)

 

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極寒の海は冷たい。だれもが頭からずぶぬれである。寒さに背を丸め、紫色にブチた太股のあたりはブルブルとふるえている。浜育ちの女でも冬場の出漁は厳しいものだという。………………………………

海の表情は毎日変化する。荒れ気味の海は波が荒く、強い大波が頭からたたきつけるように女たちを襲うのだ。その勢いに足元をすくわれ、海水の中にもんどり打つことも度々のこと。船は波に翻弄され、女たちは荒れる波に向かって「畜生!!」「畜生!!」と金切り声を上げ、船を案じ、自分の心の動揺を抑えるのであった。

(九十九里浜有情 小関与四郎著より)

 

 

 

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