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6 両立が難しい洪水対策と侵食対策(一宮川)

 

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九十九里拡大地図

 

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一宮川拡大図

 

宇多 今、我々は一宮川河口の護岸の上にいますが、これが緩傾斜堤(かんけいしゃてい)です。これに対するキャッチフレーズというのは、「親水性の確保」、「水辺に触れることができる」というものでした。でも良く考えてみてください。これはコンクリートが直接海水に突っ込んでいますよね。波をかぶるところは、藻類が表面を完全に覆っているので、ヌルヌルなんです。だから実際は滑って大変危険なわけで、誰も親しめないはずなんですね。

 

それからここ、陥没しています。明らかに50cmぐらい凹んでいますよね。中を見ると中空になっています。砂が全部抜けてしまっている。これでは乗ったらいつ崩れるかわからないから非常に危険です。でもこうなってしまったら直そうとすると、ブロック全部外さないとなりません。今から20年ぐらい前に緩傾斜堤が設計された当初は、壊れたときにはブロックを1つずつ外せて交換できるという設計思想だったんです。ところが、このように陥没した場合には、1個づつ外すということはできないですね。結局、全部やり直しなので、その設計思想のもとは、崩れていると思います。

 

この一宮川はこの付近に流れている最も大きな川です。この付近でたびたび洪水を起こしている川です。今、洪水を防ぐために上流の山のほうに大きな溜め池を5つ掘っているんです。遊水池というんですけれども、3つまで完成しました。その4、5番目を用地買収をして、造っている最中です。遊水池というのは、ドッと降った雨を一時的に溜めて一度に大量の水が川に流れないようにするためのものです。

それで今議論になっているのは、その遊水池の工事をするのに、今たくさんの土砂が出ているんです。その量大体60万m3ぐらいです。これは大変な量で、九十九里の海岸を動いている砂の10年分ぐらいの量に匹敵するんです。もともとこの付近の平地の砂というのは、さっき説明したように、海と陸を行ったり来たりしている砂です。だから海岸侵食が進行している九十九里の海に、遊水地工事で出た砂を戻せないかということを今考えているんです。戻すといっても事はそんな簡単じゃなくて、その建設残土を持っていって海に捨てれば濁り水が出ますから、漁業への影響が心配なので、漁業権を持っている漁師の人から見れば、そんなことやめてくれということになるんですね。

 

 

 

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