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土堤と護岸

背後に広がる保安林の前には、保安林を守るために土堤が築かれている。しかし海岸侵食の進む東浪見地区では、この土堤を守るためのコンクリート護岸、そして護岸を守るための消波ブロックが並んでいる。

 

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そうすると、最終的に守るべきは保安林なんですが、その前に土堤があって、さらに土堤を守るために、護岸を造る。護岸を守るため消波ブロックをおく、といった変な図式になります。確かに保安林を守ることは良いことなので、そのためには効果的な方法であることには間違いありません。

しかし、侵食から守るという点からすると問題があります。いわゆる海岸保全を目的とするならば、海岸法に基づいて離岸堤やヘッドランドと呼ばれる構造物をつくって、砂が削り取られないように、砂をこの場所に留めておくための誘導策をとることができます。ところが、保安林の保全ですと、森林法上の制限があって、護岸とその前の消波ブロックを並べることしかできない。よく法律を読むと、それ以外はできないとは書いていないですけど、現在までそうなってきたために、変なルールがあるんです。

従って、仕事の奪い合いが起こるんです。海岸までの侵食だと、海岸法の世界でやりますから、土木事務所が自分の仕事として行なう。しかし、一度侵食が内陸に食い込んだ場合には、今度は林業事務所がやるので農政部となってしまう。だから一般市民にはわからない部分ですけど、全く違う機関が海岸線に沿って2つに分かれていろいろな工事をしているわけです。見た目には整然と行われているように思いますが、実際はそうじゃない。この場所だって本当はヘッドランドの工事がきちんと行われて砂浜を守ってやれば、この目の前に連なる消波ブロックの山も必要なかったんです。砂浜があればいずれ植生が繁殖して砂を固定化させるので、ここの大きな土堤も多分要らないはずです。本来的には全体を見て調整がされるべきなんですが、今まではそうではなかった。今ようやく少しずつですがそういう話し合いができつつある方向に向かっているというところです。

 

 

 

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