今、公園の研究者からも、日本では公園設計のコンサルタントが実力を発揮できないという声が上がっていますが、その一因として、漁村公園とか農村公園のプランニングの際に、その元々の集落にマッチした公園は何かということではなくて、中央で既に決めてしまったビジョン、例えば「千葉県では南国風にしていくんだ」、というビジョンに基づいて作られてしまうということに原因があります。館山でも街全体をスペイン風にしていくことになっていますが、まずJRが協力して駅舎がスペイン風になりまして、その他にも海岸にスペイン風のトイレとかいろいろできています。
先日、『週刊現代』という雑誌を友達がコピーしてくれて、「行ってはいけないリゾート」というのに館山が入ってしまって、地元では騒ぎになっているそうです。つまり、首都圏の人を海辺に誘致するために、果たしてここで見ているような造りすぎの公園というものがどういう意味があるのかということを、今、立ちどまって考えるべき時期ではないかと個人的には思っています。
それで、ここ九十九里浜では、まだヤシの木は緑色を保っていますが、福島県には東北の湘南ということでコースタルコミュニティーゾーン事業で整備された海岸があって、要は福島にも南国をつくろうということなんですが、ヤシの木が毎年のように枯れて、枯れたまま幹のみが立っているという光景が見られます。
さらに、北海道の海岸事業でも、「サンセットビーチとヤシの木」というコンセプトがあってヤシの木を植えているんですが、北海道はさすがに本物は諦めて、稚内の手前にある羽幌付近のサンセットビーチには巨大なビニールのヤシの木が植わっていて、ちょっと不思議な空間になっています。これも公共のお金でやっているので、今後、国民がどう反応していくのか、という話を考えるべきでしょう。
宇多 今出た公共のお金ということなんだけれども、もうちょっと具体的に言うと、これは漁港海岸環境整備事業といって、ちょっと前に有名になった生活関連枠というのがありましたね。それで補正予算が組まれるパターンで、具体的にここに1億円とか何千万円というお金がそうやって下りてくるんです。
この公園の前にも広い砂浜が広がっていますが、別に人工的に造ったわけじゃなくて、目の前の防波堤を延ばしたら、背後の海面が静かになったので、海を流れていた砂が結果的に溜まってできちゃたんです。砂浜があるということは風が吹けば必ず砂が飛ぶんです。駐車場のところに砂が乗り上げていますけど、これは飛砂によるものです。砂というのは、程よくあればいいんだけれども、程よくあり続けるというのはなかなか難しくて、前に砂浜が広がると途端に陸地へ飛んでいっちゃうわけです。それが長い間起こったので、何とか止めようとして営々とやってきたのが、防砂林としての松林なんです。あれは飛砂を止めるのには非常に有効です。