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コウイカ

頭足綱コウイカ科。一般の人の目にふれるイカ類には大別して、ツツイカ類とコウイカ類があり、体の中軸を支える硬組織の成分が異なる。スルメイカ、ヤリイカなどは前者で、”ペン”と呼ばれるキチン質を主成分とする軟らかく平たい棒状の”軟甲”が背側の中心部を貫いている。スルメの干物でプラスチックが入っていると勘違いされるのはこれである。モンゴウイカ、コブシメなどは後者で、層状の多孔質の炭酸カルシウムを主成分とする”甲”が背側の全体に広がって入っている。頭足類(イカ・タコ・オウムガイ類)の祖先はアンモナイト類であるが、コウイカの甲は、巻いているアンモナイトの殻が平たく展開されたのと類似した構造をもっているのが進化的興味をひく。

 

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コウイカの甲

 

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マーメイドパース

 

ガンギエイ

エイ目ガンギエイ科。青森以南の日本近海から台湾、東シナ海の数百m海底に生息し、体長は約70cm。卵生で、冬から早春にかけて四隅に突起のある卵を産む。別名カスベとも呼ばれ、煮付けのほか乾物として食用にされる。

 

これは、魚類学的に見ても、魚の進化ということで興味深いのです。実は、8月にハワイで魚の形から新しい海のビークル、乗り物を研究するという学会がありました。この手の研究はアメリカがものすごく進んでいて、アイデア自体は日本で数年前にも出されていたのですが、アメリカが軍事予算で相当集中して研究しまして、このハコフグ形のボートの試作品を開発しています。ハコフグは砂浜に打ち上がってしまうぐらいですから、非常に泳ぎがのろいですが、水中では割と安定した形でホバリングしていられるので、そういった面から潜水艇の新しい型として、ハコフグの形からヒントを得た乗り物があり得ます。つまり生き物は長い進化の歴史の中で、良いモデルと悪いモデル、環境に適したモデルと適さないモデルとか、そういう様々なモデルがいろいろ登場しては、栄枯盛衰を繰り返しているわけですから、これを参考にすれば次世代の船舶の開発のヒントになるそうです。それで、その開発チームでは5年以内にレジャー用のビークルとして、このハコフグボートをつくるという話ですので、そのうち皆さんの目にもとまるかもしれません。

 

あと、海岸に打ち上がるものの中で、コウイカの甲、イカの体の中に入っている甲羅があります。これは炭酸カルシウムでできているのですが、これがイカの体の浮力になっていまして、大事なイカの体のパーツです。イカの甲羅は、最近は加工品屋さんでこれを砕いて人間のカルシウム剤にするということで、人間が食べるようになってきます。

 

それからこれはなんだかおわかりになりますか? これはマーメイドパース「人魚のお財布」と呼ばれるもので、実はこれガンギエイというエイの卵の殻なんですね。今日、たくさんここに打ち上がっていますが、エイの子供がこの中で育って出た後の残りです。だから、この近辺の岩の回りにはマーメイドパースが産みつけられていて、その中でエイがすくすくと育っていたということです。

海辺に行くといろいろな、これは一体何だろうという、よくわからないものが落ちていますが、非常に楽しいです。

 

 

 

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