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清野 この砂浜では異なった色の砂を見ることができますので、砂の種類と海岸の侵食の関係についてお話ししましょう。そこは今、黒い砂ですよね。こっちは白い。黒い砂は比重の重い砂鉄分を多く含んでいます。逆に白い砂は貝殻、長石、石英とか比較的比重の軽い成分からできています。つまり黒い砂があるところは、比重の軽い貝殻や長石、石英などでできた白い砂がどんどん流されていって、比重の重い砂鉄分だけが残った、つまり侵食傾向にある場所ということです。

 

宇多 その侵食傾向にあるところも、最初から黒いんじゃなくて、もとは白い砂が乗っていたんです。しかし、ここに残れるのは大きくて重いか、あるいは粒の大きさは変わらないけど、比重の大きい砂鉄が残されたんです。だから砂鉄のあるような黒っぽい砂が集まっている海岸があれば、まず大抵そこは侵食されつつあると考えていいわけですね。

 

清野 面白い話で、戦前位までの海岸侵食というのは、今日、宇多先生がお話しなさってる侵食のメカニズムとは全く異なるものがあって、海岸で砂鉄の採取を行ったために、砂浜の幅が削られたという話がたくさんあります。この砂鉄は、どこにでも満遍なく広がっているわけではなくて、ある特定の場所、つまり侵食傾向にある部分、あるいは過去にそうだった場所に集まっています。こうした部分の砂鉄を採ってしまって、侵食された地域もあったのです。

 

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九十九里浜の砂鉄

九十九里浜は古来から砂鉄の産地として知られていたが、近年は産業としての製鉄は衰退してしまった。

 

清野 ちょうど海からの贈り物がありましたので、生物のお話しをしましょう。これはハコフグです。このハコフグ、こんなところに打ち上がってしまうくらいだから、敏しょうでないと言えば鈍臭いのですけれども、もともとは岩礁のところに住んでいます。小さな胸ヒレでパタパタとヘリコプターみたいに水中を泳いでいるものなんです。今日みたいに波の高い時には、砕波帯を乗り切れなくて、砂浜に打ち上げられていることがよくあります。

 

ハコフグは、おなかのところが亀の甲みたいに丸みを帯びています。これはうろこが進化して、六角形のうろこ一つ一つそれぞれが融合して、ほんとうに体全体が固い箱型になった。でも、この箱の部分を割ると、中にちゃんと脊椎骨が入っていますので、そういう意味では、普通のお魚の基本形は保っています。

 

人工海浜

侵食や消失してしまった砂浜で、人工的に砂を入れ復元させた砂浜。また埋立地などもともと砂浜の無い場所に人工的に砂浜を造成したものもある。侵食が進行する砂浜の人工的復元のことを養浜(ようひん)という。

 

ハコフグ

フグ目ハコフグ科。日本以南の暖かい海に生息。体の大部分は硬いうろこで覆われ、断面が五角形の箱型になっているため、体を屈曲させずにヒレだけで泳ぐ。他のフグの仲間のように内臓にフグ毒(テトロドトキシン)はなく、皮膚毒を有する。外敵に襲われると皮膚毒を出し身を守る。肉は無毒の白身で、味噌焼きにして食する。

※調理には要免許

 

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砕波帯

汀線と波が砕け始める一番沖の部分との間のことで、一般的には200m前後の幅であるが、九十九里浜や千里浜のように海底勾配が緩い遠浅の海岸では、砕波帯の幅は数百m以上にもなり、その間で数段にわたって波が砕ける。

 

 

 

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